元プロ監督が九州国際大付を16年ぶり大会連覇に導いた。元西武捕手で、引退後は西武、楽天でスカウトなどを務めた楠城徹監督(64)が、昨年8月の就任以来、プロ39年間の経験をチームに注入。選手の特質を見極めた起用や守備位置のコンバートが実を結び東海大五を撃破して99年の東福岡以来の夏甲子園連続出場を決めた。

 「楠城マジック」がさく裂だ。9回2死一、三塁のピンチ。昨秋の新チームで投手から野手に転向した山口耀平外野手(3年)が背走で中飛を好捕しゲームセット。今朝、先発を言い渡されたサプライズ起用の背番号「11」、野木海翔投手(3年)が山口に合掌ポーズで感謝する中、ナインが駆け寄り歓喜の輪ができた。昨年8月の就任以来、楠城監督が手塩をかけて育ててきた選手たちがグラウンドで躍動。16年ぶりの福岡大会連覇をけん引した。「自分の目を信じてやってきた」という、プロ39年間の経験注入が就任1年目で開花した。

 決勝戦は選手起用がズバリ当たった。楠城監督はこの日の先発に、東海大五の主軸に右打者が多いとの理由で右腕の野木を大抜てき。野木が「最速は140キロ出ていた感じ」という直球にスライダー、カーブ、フォークを織り交ぜてなんと高校初の6安打完封。「バッター1人1人に集中し、全力で投げることを意識しました」と、監督の期待に応えてみせた。

 それだけではない。昨秋、野手から捕手に戻った岩崎魁人主将(3年)の好リードも光った。打っては指揮官が「バッティングがいい」と秋から2番起用する山口外野手が値千金打だ。1点リードの6回1死一、二塁から右翼線二塁打で2点を奪って突き放した。

 西武、楽天でスカウトなどを務めた経験もフル活用された。「ゲーム分析は得意とするところ」(楠城監督)。東海大五の映像分析等で戦術を練った成果だった。またトレーニングコーチを初招へい。スクワットメニューで体力を増強させるなど筋力アップに心血を注いだ。初めて臨む甲子園へ「小倉高校で春に出させてもらいましたが1回戦で負けた。勝ちたいですね」と意気込む。元プロ監督の采配で聖地をわかせるつもりだ。【菊川光一】

 ◆楠城徹(くすき・とおる)1950年(昭25)12月22日、北九州市生まれ。現役時代は捕手。小倉高で69年春に甲子園出場。早大から73年ドラフト2位で太平洋クラブに入団。クラウンライター、西武とライオンズ一筋でプレーし、80年に引退。プロ通算366試合、9本塁打、打率2割3分。引退後は西武スカウト、1軍ヘッドコーチ、編成部長など。05年から楽天で編成部長、スカウト部長。12年楽天を退団。昨年、学生野球資格を回復。

 ◆九州国際大付 1958年(昭33)私立八幡大付属として男子部開校。89年に現校名。10年から共学。普通科のみで生徒数1703人(女子752人)。野球部は58年創部で部員数70人。春は2度出場し11年準優勝。夏6度目。OBはソフトバンク二保旭ら。所在地は福岡県北九州市八幡東区枝光5の9の1。伊東正和校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦24-0筑豊

3回戦5-3折尾愛真

4回戦6-0小倉工

5回戦4-3福翔

準々決勝4-3朝倉

準決勝4-2小倉

決勝4-0東海大五