100年の重みを力に変えた。第1回大会優勝の京都二中の流れをくむ鳥羽(京都)が、岡山学芸館を下し15年ぶりの夏勝利。伝統の粘り勝つ野球を軸に「100年ぶりV」へ好スタートを切った。

 1世紀の歴史を背負ったナインが、甲子園で光輝いた。第1回大会が行われた100年前、頂点に立った京都二中の流れをくむ伝統は生きていた。山田知也監督(39)はこう振り返る。「京都大会から何か不思議な感じなんです。試合で選手も高ぶることなく、落ち着いているんです」。伝統校ならではの見えない力が選手を後押しした。

 先発全員安打の快勝を生み出したのも、エース松尾の粘り強い投球だった。1回から9回まで3者凡退がなく、再三ピンチを背負いながら1失点。「アルプスの応援を見て、気持ちを落ちつかせた」。4回1死一、三塁、相手スクイズを瞬時に外してピンチを切り抜けた。普段から自分に言い聞かせている言葉がある。「いつも心を動かすな」。どんなピンチでも動じない強い心があった。

 京都二中は第1回大会で引き分け再試合を制して優勝するなど、粘り勝ちが持ち味だった。選手宣誓の大役を果たした梅谷主将も「昔の資料を見て守りのチームだったという印象がある。僕たちも終盤勝負の展開で勝ててうれしい」と粘り勝ちを喜んだ。

 京都大会優勝後、選手たちが浮ついているとみるや、山田監督は甲子園入りする前に選手1人1人と面談した。松尾は「過信するなと言われた」。チームは再び1つになり、新たな歴史を刻んだ。

 「ぜひ優勝したい。100年ぶりの優勝って、かっこいいじゃないですか」

 エース松尾はそう言って胸を張った。100年たっても変わらない伝統は生きている。甲子園で輝いた鳥羽ナインの笑みが、それを証明していた。【浦田由紀夫】

 ◆全員安打 鳥羽が記録。13年の常総学院(対福井商)以来で通算67度目。