9年連続出場の聖光学院(福島)が東海大相模(神奈川)に敗れ、09年以来6年ぶりに初戦で姿を消した。先発の右腕エース森久保翔也(3年)は3回までに6失点も、4回以降は修正して完投。野手陣が東海大相模の先発右腕吉田凌(3年)相手に苦戦する中、バットでも2安打1打点と気を吐いた。

 日本一を目指した聖光学院の甲子園は、わずか1試合で終わった。「アウトを取ろうと投げ急いでしまった」と森久保はあふれる涙を拭った。1回裏、1、2番を簡単に打ち取った後、2死から四球を挟む4安打で4失点。3回も2死から4連打で2点を失った。

 狙いが外れた。変化球に弱いと分析した相手打線に対し、スライダー、シンカー、カーブなど多彩なボールを使い、攻めた。だが甘い球はすべて捉えられる。4回からは「点を取られるのは当たり前」と開き直り、直球と縦のスライダー中心の組み立てに変更した。

 以降の4イニングで、許した安打は2本だけ。6回裏満塁のピンチも動じず、中飛で切り抜けた。斎藤智也監督(52)は「低めに丁寧に投げようとする意志が伝わってきた。ベストピッチングだった」とねぎらった。森久保は「最初からああいうピッチングをすれば良かった」。なおさら、相手を意識した序盤が悔やまれた。

 無得点のまま迎えた8回表無死二塁では、相手先発吉田のスライダーを捉え右前タイムリー。「何とか1点を取り返して差を縮めていこうと思った」。最後まで勝利への執念をみせた。

 生まれは神奈川。中3の夏、観戦に訪れた福島県大会で当時の聖光学院エース岡野祐一郎(現青学大3年)の投球に感激し、入学を決意した。今大会前には、その岡野がグラウンドに訪れた。もらった助言は「当てるつもりでいいから内角を攻めろ」。この日は6、7回で3死球。果敢にインコースを攻めた証しだ。チーム6年連続の初戦突破はならなかった。だがエースは、憧れの先輩に近づくピッチングを聖地に残した。【高場泉穂】