関東第一(東東京)オコエ瑠偉外野手(3年)の夏が、涙で終わった。試合後のお立ち台、仲間への気持ちを問われると「自分を育ててもらって、感謝の思いでいっぱいです」。そう言って、瞳の奥から抑えきれない涙があふれ出した。

 毎試合、走攻守で魅せた「オコエ劇場」。準決勝は、スライダーに苦しむ結果になった。1回の第1打席、東海大相模・吉田の外角スライダーに手を出し、空振り三振。3回も再び外角低めにワンバウンドするスライダーで空振り三振を喫した。「右投手の中では今まで見てきたスライダーの中でNO・1です」と言った。分かっていても、バットが止まらなかった。

 それでも集中力を切らさないのがオコエだ。10点を追う7回は、内角直球を左前に運び、反撃ののろしを上げた。「気持ちだけでした」。昨秋から苦しんだ内角対策に、大会前に85センチだったバットを83センチに変えた。2センチの変化と、磨いた技術で内角苦を克服。反撃のホームを踏んだ。

 チームは12安打を放ったが、3点止まりで初の決勝進出を逃した。オコエは卒業後の進路について「プロが第1希望です」と明言。「今まで日本にいなかったような、(走攻守)すべてでトップレベルの選手になりたい」と大志を語った。

 整列後、東海大相模・小笠原を呼び止め「自分たちの分まで優勝してくれ」と思いを託した。「一塁強襲二塁打」「背走のスーパーキャッチ」さらに「9回決勝2ラン」…。聖地の3試合で鮮烈な印象を残し、オコエが甲子園を去った。【前田祐輔】