大湊が弘前学院聖愛を8-4で破り、7年ぶりの決勝進出を決めた。2回1死から登板の高塚耕大(3年)が7回2/3を7安打2失点の好投。打っては7回に2点適時打を放った。「下北から甲子園」を合言葉にナインが一丸。私立4強のうち3校を撃破し、明日21日の決勝で残る1校、八戸学院光星と対戦する。下北魂で快進撃、悲願の甲子園まであと「1」だ。

 高塚が気迫の投球で聖愛打線に向かっていった。鋭い目つきで力投。打ち取るたびに、大きな声を上げた。「相手は逆転勝ちの連続で勢いがある。笑顔で、大きな声を出してくる。こっちも負けてはいられない。声を出し、腕を強く振った」と高塚は声を弾ませた。

 9番の打席では7回表2死二、三塁で中前打を放ち、2者をかえして8-4とした。打線はこの回、5安打で一挙4点。相手の聖愛は連続2試合、終盤に大逆転で勝ってきた。だが下北魂がミラクルを阻止。勝利の瞬間は、ひときわ大きな雄たけびを上げる高塚を中心に、ナインがひとかたまりになった。

 「何が起きているのか」と工藤公治監督(44)はぼうぜんとした表情すらみせた。「神がかっている。いつ切れるか怖いです」とも。この日は風が強く、ラッキーなヒットもあった。今大会、ベンチから「野球をやろうよ」と声をかけ続けた。勝利を意識することなく、目の前の1球1球に集中することをシンプルな言葉で表した。

 他地域と距離的に遠く、気候も厳しい下北半島。今大会出場は5校と少ない。最後の砦(とりで)の大湊が快進撃だ。4回戦で青森山田、準々決勝で八戸工大一、準決勝で弘前学院聖愛と私立4強の3校を破った。この日はOBや地域の人たちが大勢応援に詰め掛け、大声援。地元むつ市内では試合の時間、車の通行量が極めて少なくなった。テレビ中継を見るためだ。

 09年の決勝では青森山田に3-4の惜敗。11年秋の県大会決勝では、後に甲子園準優勝の光星に敗れた。東北大会に出場し、初戦敗退。青森県の21世紀枠推薦校に選ばれたが、東北地区で落選した。三度目の正直。「最後は大きな壁、光星さん。下北魂でぶつかるだけ」と工藤監督は力を込めた。【北村宏平】

 ◆青森県立大湊高等学校 1948年(昭23)創立。総合学科で生徒数は583人(女子373人)。陸上競技部も強豪で、ロンドン五輪男子400メートル障害日本代表の岸本鷹幸(26=富士通)はOB。野球部は89年秋季県大会、92年春季県大会優勝など。部員数は41人。所在地は青森県むつ市大湊字近川44の84。福士広司校長。

 ◆下北半島 青森県北東部に位置する、斧(おの)の形をした半島。東は太平洋、北は津軽海峡、西は陸奥湾に接している。マグロの一本釣りでおなじみの大間町や恐山、馬の放牧地・尻屋崎、菜の花畑が有名な横浜町などの観光地がある。最大都市は大湊高があるむつ市で、人口は6万78人(6月30日現在)。