第98回全国高校野球選手権大会が7日、甲子園球場で開幕した。九州勢は昨夏8強の九州国際大付(福岡)が壮絶な打ち合いの末、盛岡大付(岩手)に6-8で敗れ、初戦で姿を消した。エース藤本海斗投手(3年)が164球の熱投も、9回に決勝弾を浴びて悔し涙を流した。

 九州国際大付・藤本は左翼席を見つめたまま、しばらく動けなかった。6-6の同点で迎えた9回1死。フルカウントから盛岡大付の2番菅原に投じた内角高め131キロをはじき返されると、マウンドでぼうぜんと立ちつくした。

 「8回から握力がなくなってきたが、気力で投げた。でも高校野球は甘くはなかった。全国大会は違うと実感した。本当に悔しい」

 序盤から点を取り合うシーソーゲーム。14安打を浴びたが、エースの意地で腕を振り続けた。初回にこの日最速141キロをマークしたが終盤は、130キロ台前半に。限界を超えていた。

 昨秋、福岡大会5回戦で9回に1球の失投から東筑に逆転負けを喫し、グラブの内側に「一球の覚悟」と刺しゅうを入れた。甲子園でもその1球が明暗を分けた。「秋、春と僕のせいで負けていて、1球で終わらせないのがテーマだったが、甲子園は甘くなかった…」。

 14人きょうだいで話題となった昨年の主戦、富山凌雅投手(現トヨタ自動車)からエース論を電話で教えられてきた。「エースになるのは簡単やけど、そこから誰にも負けないプライドを持てるか。エースが投げて勝たないとチームのためにならない。気持ちの強さが大事」。そう話してくれた先輩はスタンドから声援を送ってくれたが、その前で結果を残せなかった。「先輩の背中を追って甲子園に来たのに…。合わせる顔がない」と涙をぬぐった。

 「甲子園での思いを忘れずに、これからやっていきたい」。藤本は聖地で味わった悔しさを胸に刻み込み、今後の野球人生を歩んでいく。【福岡吉央】