智弁学園(奈良)の春夏連覇の夢が2回戦で消えた。3失策から鳴門(徳島)に逆転負け。選抜大会初戦から甲子園全7試合完投のエース村上頌樹(3年)は「ぼくまで泣いてはチームに申し訳ない」と涙をこらえ、聖地を去った。

 最後の塁上の走者はセンバツ決勝サヨナラ打の村上だった。9回2死二塁。大橋の打球は二飛になった。二塁から得点にならないホームを踏み、天を仰いだ。「高校野球が終わったな」。4万2000人のどよめきを村上は聞いていた。

 失策がらみの失点だが、要所で制球も甘くなった。「気持ちが入って、高めに浮いて」。9回2死満塁からの鳴門・鎌田の打球。「捕ってくれ!」の願いもむなしく、右前に落ちる決勝打に。春の開幕戦から全7試合、甲子園のマウンドを守りながらも「最後まで勝つ投手でなくて、みんなに申し訳ない」と悔やんだ。

 重圧と戦った奈良大会。「甲子園に行けば自分たちの野球ができる」と小坂将商監督(39)は選手を励まし続けた。ケガの多い岡沢、福元には特製の数珠を贈り、無事を祈った。村上の支えは、6月に顔面骨折した岡沢の復活。「こんなにリードしやすい投手は世界中どこを探してもいない」と言ってくれた女房役を信じ、春夏甲子園全921球を投げ抜いた。

 涙にくれる仲間の中で「自分まで泣いては申し訳ない」と、泣きたいときに笑顔を見せた。来春は納と東洋大に進学予定。「勝てる投手を目指します」と涙をこらえ、春夏連覇の夢に別れを告げた。【堀まどか】