北のイケメンエースが、創部116年目の古豪を初の決勝へと導いた。「V6岡田准一似」と話題の北海(南北海道)大西健斗投手(3年)が、8安打3失点(自責2)で初戦から4戦連続完投。春夏連続で4強入りした秀岳館(熊本)の猛追をしのいだ。北海道勢の決勝進出は、田中将大(現ヤンキース)を擁して準優勝した06年駒大苫小牧以来、10年ぶり。作新学院(栃木)は春夏連覇して以来、54年ぶりの決勝進出となった。決勝は今日21日に行われる。

 北のイケメン右腕が、真夏の聖地に爽やかな風を吹かせた。終盤、秀岳館の猛追にあい、4点あったリードはあっという間に1点に。緊張の9回のマウンド。大西は2死一塁から、最後の打者を140キロ直球で遊ゴロに仕留めると、帽子を取って、笑顔で額ににじんだ汗をぬぐった。打っても3回、「元4番の意地です」と先制の2点三塁打。「信じられない。1年間、苦しい思いをしてきたのが報われた」。4戦連続完投のエース兼主将は、夢心地だった。

 大会中に完全習得した、縦に落ちる変化球が生きている。それまで、ブルペンだけで投げていたカットボール。握りを工夫し、初戦の松山聖陵(愛媛)戦で実戦投入したところ、思いの外、有効だった。カウントを取るだけの球が、試合を重ねるごとに割合も増え、三振を狙うウイニングショットに。この日も3回に、最も警戒していた1番松尾から空振り三振を奪った。本格的に投手に転向したのは、高校入学後。まさに今、伸び盛りだ。

 昨夏の甲子園は、開幕試合で鹿児島実(鹿児島)に18失点し大敗。自身も3番手で登板し、1死も取れず降板した。主将になって迎えた昨秋の大会は札幌地区予選で初戦敗退し、右肩の炎症でチームを離れた今春も、北海道大会に出場できず。平川敦監督(45)から「このチームで甲子園に行ったら、映画が1本作れるな」と言われたことを励みに、二人三脚で投球フォームを見直してきた。

 全国最多37度目の出場ながら、夏の決勝進出は初めてだ。創部116年目の歴史の中で、ひ弱だった世代が、全国制覇に王手をかけたサクセスストーリー。「(日本一への)挑戦権を得られたことがうれしい。最後は笑顔で終わりたい」。完全燃焼の先に、きっと最高のエンディングが待っている。【中島宙恵】

 ◆大西健斗(おおにし・けんと)1998年(平10)11月17日、札幌市生まれ。小学4年から野球を始め、札幌中央中時代は硬式の札幌北シニアに所属。北海では1年秋に初めてベンチ入り。昨夏は背番号10で甲子園1回戦(対鹿児島実)に3番手で登板し、1アウトも取れず3失点。今春は右肩炎症で棒に振ったが、夏にエースとして復活。180センチ、76キロ。右投げ右打ち。

 ◆オール完投で決勝進出 北海・大西は初戦から4試合連続完投。決勝まで全て完投で勝ち上がったのは、09年伊藤(日本文理=4試合)以来。