夏3連覇を狙う鶴岡東が山本学園に3-2で延長10回サヨナラ勝ちし、初戦を突破した。最速149キロを誇るドラフト候補右腕の吉住晴斗(3年)がプロ5球団6人のスカウトが見守る中、2-1の8回1死三塁から登板。同点適時打を浴びるもその後は無失点に抑え、10回2死満塁から佐藤壮馬外野手(3年)がサヨナラ右前打を放ち試合を決めた。

 サヨナラ発進を決めた吉住は、喜ぶことなく淡々と整列に加わった。8回1死三塁から登板し、直後に同点打を浴びて延長戦にもつれさせてしまった責任からか、試合後の剛腕に笑顔はなかった。

 「勝ててよかった。あそこで打たれたけど、後攻だったので切り替えられた。球速にこだわらず丁寧に投げられた」

 4月29日の酒田光陵との庄内地区予選以来、約2カ月ぶりの公式戦登板でドラフト候補の片りんは見せた。185センチ、85キロの堂々とした体格を生かし、真上から右腕を豪快に振り下ろした。この日の2球目に最速145キロを計測。常時140キロ台の直球に120キロ台の鋭角スライダーを織り交ぜ、2回2/3を2奪三振。許した安打は適時打1本のみ。「直球の質にこだわってきた。去年は140キロを超えても安打を打たれていた」と昨秋からの成長を実感できた。

 プロ5球団6人のスカウトが吉住に熱視線を送っていた。DeNA武居邦生スカウトは「真上から腕を振れていて、肘が柔らかい。将来性を感じる」とたたえた。ヤクルト酒井圭一スカウトも「球に力がある。初戦で力が入り過ぎているから、力みがとれる次戦が楽しみ」と目尻を下げた。

 進路を封印して、チームのV3に集中する。「夏が終わってから。今は勝つことだけに集中したい」。明日19日の3回戦は宿敵山形中央と激突する。過去3年連続で夏に対決し、勝った方が甲子園に出場している。春は8-3で勝ったが「相手どうこうより、自分の投球をするだけ。与えられた場所でしっかり抑えたい」と気を引き締めた。吉住の右腕がV3の扉をこじ開ける。【高橋洋平】