南北海道大会1回戦で、春の全道王者駒大苫小牧がセンバツ出場の札幌第一に5-3で競り勝ち、07年以来10年ぶりの夏甲子園へ好発進した。1点ビハインドの8回、無死一塁から盗塁死で好機をつぶしかけたが、4安打に2四死球、相手失策にも乗じ逆転。9番エース工藤稜太(3年)が右前適時打で5点目を奪い、春秋王者対決を制した。

 駒大苫小牧が、敗戦ムードが漂う中、泥臭く勝利を手繰り寄せた。2-3で迎えた8回、先頭の4番林田が中前打で出塁も、チャンスに強い5番安田匠の打席で、二盗を試みアウトになった。ノーサインで動いたプレー。佐々木孝介監督(30)は盗塁が少ない序盤に「相手の投球を見てチャンスがあれば動きなさい」と指示を出していたが「あそこは、安田だし打たせようと思っていた。まさか走るとは。びっくりしました」。思わぬ意思疎通のずれで好機が消えかけた。ただ、選手たちの積極的なミスは、運を引き寄せた。

 この盗塁で札幌第一の選手が負傷し、治療のため5分の中断が挟まれた。「中断の間、自分の指導がまだ甘かったのかとか、いろいろ考えてしまいました」。佐々木監督が弱気な思いも巡らせる中、選手はたくましかった。再開後、5番安田が中前打で出塁すると6番熊沢が死球、7番仁和が粘って四球。1死満塁から8番岩舘の犠飛で追い付き札幌第一エース冨樫をじわじわ追い詰めた。

 つかんだ流れを逃さないのが駒苫流だ。暴投に乗じて勝ち越すと、2死三塁で9番工藤が「監督に言われた通り外の球をたたいた。打撃は苦手だけど結果が出て良かった」と貴重な中前打で追加点をたたきだし、昨秋王者をねじ伏せた。

 「勝つことの難しさを感じました。最後は選手の執念としか言いようがない。あの状況から相手にプレッシャーをかけ、自分たちのミスを自分たちで取り返してきてくれた」と佐々木監督。主将として04年に北海道初の全国制覇を果たしたときも、小さなチャンスをふくらませ、粘りの野球で勝ち上がった。昨秋は13季ぶりに地区で敗退しどん底に落ちたが「ああ、いいチームになったなあと感じました」と前を向いた。あと3勝。監督も選手も、ともに成長しながら10年ぶりの夏をつかむ。【永野高輔】