南北海道大会準々決勝で、札幌大谷が春の全道王者駒大苫小牧を2-1で下し、夏初の4強に進出した。1回1死満塁から相手失策で2点を先制すると、エース西沢朋哉(3年)が駒苫打線を8回まで無失点。9回に1失点も7安打完投で勝利に導いた。

 “びびりエース”西沢が3年生の意地を見せた。1点差に追い上げられた9回2死一塁。最後の打者を三塁ゴロに打ち取ると、左手で小さいガッツポーズをしてから「しゃ!」と短く声をあげた。春王者相手に8回まで無失点。気迫の投球で初4強に導き「みんなの支えがあったから勝てた」と謙虚に振り返った。

 春の練習試合で駒大苫小牧と対戦した。「打席の選手が声で威圧してくるので、びびってしまった」と1回で降板。その経験から、黙々と投げるスタイルを変え「自分も強い気持ちを持たなきゃダメだと思った」と、要所で雄たけびをあげることで恐怖心を振り払った。

 監督とコーチの助言も効いた。試合前、船尾隆広監督(46)は駒大苫小牧の華やかな応援に動揺しないよう「相手の音楽に乗っていけ」と逆利用。西沢は「一塁手と捕手の声が聞こえなかったが、あの言葉で楽しんでやれた」。試合中には駒大苫小牧OBで05年全国Vメンバーの五十嵐大コーチ(30)が「このまま終わらないのが駒苫。最後まで気持ちで負けるな」とカツ。集中力を維持した。

 春の地区予選は2回戦で東海大札幌に逆転負けした。1-0の8回にスタミナ切れから四球で自滅し2失点した。その反省から下半身を強化するため高校からグラウンドまで約10キロ走ってから投球練習した。「下半身がしんどいときに投げることで、より下半身を使って投げられるようになった」。その成果は9回の踏ん張りにつながった。

 初めてベンチ入りした昨春、初の全道王者に輝いたが、夏は地区初戦で敗れた。「余裕だという雰囲気が出ていたことが負けにつながった。1戦1戦やらないと」。もう、びびらない。屈辱からたくましくなった左腕が、春夏通じ初の甲子園に導く。【永野高輔】