最速144キロを誇る仙台のプロ注目左腕佐藤隼輔(3年)が宮城農を7回3安打13奪三振無失点に抑え、3戦連続で完封勝ちした。打っては4回に野球人生初となる本塁打を放つなど2安打4打点。降雨で2度にわたる約3時間の中断にも集中力を切らさず、試合再開後の7回裏にはコールド勝ちを決める中前適時打を放った。試合を7-0で終わらせ、2年連続で4回戦に進出した。

 鉄仮面の表情が一瞬緩んだ。2度目の降雨で2時間41分にわたる中断直後の7回裏。2点を奪ってなお2死二塁、再開後わずか10分で試合を決めた佐藤隼は、淡々と投げる投球時とは違って珍しく笑顔で整列に加わった。「普通にうれしかった。再開前に立ち投げで準備していたけど、投げないことに越したことはないので」。7回コールド勝ちを逃せば8回のマウンドに立っていただけに、試合後は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 糸を引くような直球が、降り注ぐ雨を切り裂いた。「雨だったのでコントロール重視でいった。球数を少なく投げられた」。初回から圧倒的な6者連続三振に始まり、毎回の13奪三振(見逃し5個)。97球で3安打無四球無失点に料理した。今大会3試合で25回無失点39奪三振と驚異的な数字をマークするが「思い切り投げて抑えても仕方ない。力まず投げられている」と平然と言い切る余裕がある。

 打撃でも存在感を示した。2回には先制中犠飛を放ち、4回には高めの内角直球を右翼席に突き刺すなど2安打4打点。「野球人生で初めて。今までは外角を流していた。久しぶりに引っ張った」。8番に起用する石垣光朗監督(54)からは「自由に打たせた方がいい。自分で考えられる選手」と信頼されている。

 対応力が高い。この日、約3時間の中断中は指示されることなく自分の判断で、控室の中で体を動かしながら左肩を冷やさなかった。母の手作り弁当を半分食べながら、試合への気持ちは切らさずに再開を待っていた。「集中力にはそこそこ自信があるので」。あす26日の4回戦は仙台城南と激突する。「次も抑えないと意味がない」。仙台の「ドクター0」は静かに闘志を燃やした。【高橋洋平】