第90回記念選抜高校野球大会(来年3月23日開幕、甲子園)の21世紀枠の各地区候補9校が15日、日本高野連から発表され、東北からは由利工(秋田)が選ばれた。今秋の県大会では最速142キロのエース右腕佐藤亜蓮(2年)の力投で、3位に入った。創部56年目で初出場となった秋の東北大会では1勝を挙げて8強に進出し、春夏通じて初の甲子園に前進した。同枠3校を選ぶ選考委員会は来年1月26日に行われる。

 湧き上がる闘志を抑えきれなかった。佐藤亜の発する言葉の節々から、センバツへの情熱がほとばしっていた。

 佐藤亜 東北代表で第1関門を突破しただけ。甲子園に近づいたうれしさとプレッシャーがある。センバツに選ばれたら、全国でも注目されるぐらいまで力をつけて、殴り込みたい。

 世界規模の男だ。珍しい“亜蓮”の名は海外渡航好きの父三男さん(58)が、世界でも通用するようにと名付けた。父は同校野球部OBで主将を務めたが、甲子園出場は夢に終わった。「お父さんの無念を晴らしたい」と由利工に進学。最速142キロの直球とカーブ、スライダー、チェンジアップを右上手から投げ込み、今秋は県3位に入った。創部56年目で春秋通じて初の東北大会出場に導いた。

 物おじしない強気な投球が売りだ。東北大会では1勝を挙げ、強豪花巻東(岩手)にも6回まで無失点。7回に4点を失って逆転負けしたが「まだ自分のしたい投球ではなかった。チームの中にあった隙を経験できたのは大きい」。大会後は、伝統的に同校で行われている「3合タッパ作戦」で肉体改造に着手。毎朝毎晩に3合の白飯を納豆で食べ、現在は大会後から4キロ増の79キロまで増量に成功した。

 夢が広がる。小3から野球を始め、全国大会には無縁だった男に最大のチャンスが訪れた。「目標は150キロ。140キロちょっとだとプロ入りのレベルに達していない。キレと伸びを磨く」。世界より先にまず、甲子園で己の名をとどろかす。【高橋洋平】

 ◆佐藤亜蓮(さとう・あれん)2001年(平13)2月8日、秋田・由利本荘市生まれ。下川大内小3年から野球を始め、大内中では軟式野球部。由利工では1年春からベンチ入りし、同年秋からエース。174センチ、79キロ。右投げ右打ち。家族は両親。

 ◆由利工 1962年(昭37)創立の県立校。機械、電気、環境システム、建築の4科に分かれる。生徒数は375人(女子27人)。部員は41人。主なOBは元サッカー日本代表MFの藤島信雄。所在地は秋田県由利本荘市石脇字田尻30。夏井博実校長。