聖地のマウンドで新たな伝説をつくる。花巻東(岩手)西舘勇陽投手(1年)は自信に満ちあふれていた。「(大谷)翔平さんに憧れて、花巻東に入学してきた。小さい時からテレビで見てきた場所に立ててうれしい。自分の力を出して、日本一に導きたい」。メジャー挑戦中の大谷は、かつて同校で背負った「17」を選んだ。西舘も1年秋から出世番号「17」を任され、本番も背負う。「大谷2世」として新怪物候補に挙がる。

 並の新2年生じゃない。この冬で2センチアップした184センチ、4キロ増量した76キロの恵まれた体格から投げ込む直球は、最速142キロを誇る。さらにカーブ、スライダー、スプリットを自在に操り、空振りもカウントも両方奪える。恩師の佐々木洋監督(42)は絶賛する。

 「指先に目がついているほどの制球力。手先も器用で変化球が素晴らしい。過去2度のセンバツは雄星、大谷で行ってるんだから、西舘は持っている」

 悔しさが成長の糧だ。昨秋の東北大会は同校初の決勝進出。4回途中から西舘が登板するも、8回に決勝弾を浴びて聖光学院(福島)に屈した。「悔しかったし、自分が力不足。それを忘れないように、この冬はやってきた」。今大会の目標は大谷ですら、成し得なかった甲子園1勝。その先に東北勢初優勝がある。「自分がマウンドに上がった以上は抑えたい。もっと変化球の精度を上げないと。1歩でも翔平さんに近づきたい」。大谷より先に開幕するセンバツで、大きな足跡を残してみせる。【高橋洋平】

(おわり)

 ◆西舘勇陽(にしだて・ゆうひ)2002年(平14)3月11日、岩手・一戸町生まれ。一戸南小3年から野球を始め、一戸中軟式野球部では全国大会出場。花巻東では1年夏からベンチ入り。184センチ、76キロ。右投げ右打ち。