今日23日に開幕する第90回選抜高校野球に出場する駒大苫小牧(北海道)が22日、甲子園で開会式リハーサルに臨んだ。グラウンド状況が悪く全体行進は中止となり、大槻龍城主将(3年)とプラカード持ちのみの行進となった。大槻主将は明日24日の静岡戦に向け、歩きながら音の響きと、内野の距離感を再確認。04年主将の佐々木孝介監督(31)から学んだ発声法、05年主将の林裕也(30=東芝)から教えられた二塁守備の極意を生かし、まずは初戦突破を目指す。

 目の前の優勝旗に気持ちが高ぶった。大槻とプラカードを持つ三好雄大内野手(3年)の、2人だけの行進リハーサル。駒大苫小牧の前で、前年度覇者の大阪桐蔭・中川卓也主将(3年)が紫紺の優勝旗を掲げ、歩いていた。大槻は「あの旗を持ち帰りたいという思いになった。そのために、目の前の1勝に集中しなければと気持ちが引き締まった」という。

 日本一になるためのノウハウは、ある。04年夏に初めて全国制覇した際の主将、佐々木監督から、聖地での発声法を伝授された。歩きながら音の響きを確認し「叫ぶのではなく、高めで太く通る声を出すよう繰り返し言われてきた。やってきたことを試合でやれば問題ない」と手応えをつかんだ。1オクターブ高く、オペラ歌手のように腹から張りのある声を発する。さらにジェスチャーとアイコンタクトを交え、大歓声の中、的確に意思を伝え合う。

 05年主将の林から、二塁守備での留意点を教えられた。林の経験談を聞いた小崎コーチが、滋賀合宿中に伝えた。「一塁手の後ろに観客がいるので、普段の送球感覚とずれることがあると聞いた。歩きながら少しイメージを描けた。試合前のシートノックで再度チェックしたい」。名手林でも暴投した聖地の怖さを事前に頭にたたき込むことで、ミスを回避する。

 20日の甲子園練習は雨天のため室内練習。開会式リハーサルもグラウンド不良で簡略化された。聖地をリサーチする機会が限定されたが、カバーする経験則が駒大苫小牧にはある。この日の土について大槻は「甲子園練習後にグラウンドに出たときは雨上がりで軟らかかった。そのときより硬く感じた」と分析。わずかな時間も、無駄にはしない。距離感、音の響き、天候による足場の変化もイメージしながら、臨戦態勢を整える。【永野高輔】