第90回記念選抜高校野球大会(甲子園)に6年ぶり3度目出場の花巻東(岩手)が「大谷翔平魂」で、09年以来の8強に挑む。彦根東(滋賀)との3回戦を翌日に控えた30日、兵庫県内で最終調整。偉大な先輩のメジャー初打席初球初安打に刺激を受け、菅原颯太主将(3年)は積極的な攻撃で相手エース攻略を誓った。大谷らOBのプロ野球選手から贈られた激励Tシャツも練習で初着用し、気持ちを高めた。

 先輩の偉業が、花巻東ナインの力に変わった。日本時間早朝のメジャー初打席初安打は、まだ夢の中。午前11時から開始する練習を前に、菅原主将は「翔平さんや(菊池)雄星さんからいただいたTシャツを着よう」と、結果を知らないまま提案した。汚さないため練習着用を自粛していた“勝負服”を解禁した。

 菅原は三塁を守るノックで、ダイビングキャッチでチームを鼓舞。胸を黒くした姿で「自分たちは高校野球、翔平さんは世界で一番を目指している。レベルは違うけれど、翔平さんに負けてはいられない」と闘志を燃やした。フリー打撃でも快音連発。大谷が初球を右前安打したことを伝え聞くと「自分たちも好投手を相手に初球から積極的に打っていきたい」と“大谷魂”を継承した。

 「新怪物候補」として背番号「17」を引き継ぐ西舘勇陽(ゆうひ)投手(2年)は、先発の可能性が高まってきた。キャッチボールすら行わずに、肩の休息を優先。「大舞台の1発目で結果を出せるなんて、精神的にすごい。優勝旗は東北に1回も来ていないので『岩手から日本一』を到達して、大谷さんにも報告したい」。甲子園デビュー1球目から、最速142キロの素質を披露するつもりだ。

 佐々木洋監督(42)も教え子に賛辞を送った。「高校時代から向こう(メジャー)に行きたい思いがありましたから、ようやくスタート。夢が実現したなと思う」。初球安打にも「彼らしい。2ストライクに追い込まれた記憶もない」と笑顔。選手だけでなく岩手県や東北の子どもたちに夢を与えてくれたことを強調するだけでなく「今まで順調すぎるので、まだまだ苦労してほしい」と親心も抱いていた。

 センバツ出場決定後には、同監督を通じて激励動画も届いた。「夢をかなえるために、お互い頑張ろう」という内容のメッセージ。花巻東の甲子園での頂点は、大谷も抱き続ける夢の1つ。菅原は胸の土を払いながら「ベンチもスタンドも応援してくれる先輩も含めて、一体感で勝ちたい」と力を込めた。【鎌田直秀】