6年ぶり3度目出場の花巻東(岩手)が、0-19で大阪桐蔭に完敗を喫した。1回表、いきなり3連打を放ったがミスで好機を逸して無得点。同裏に四死球や失策も絡んで4失点した初回の攻防が、大量失点での敗戦に直結した。春夏通じた甲子園での同校最多失点だけでなく、岩手県勢ワースト。12年春に対戦して敗れたリベンジを果たすどころか、不名誉な記録での返り討ちで、準優勝した09年以来の4強進出を逃した。

 優勝候補に挑む夢舞台は、屈辱的な2時間33分だった。3投手が11四死球、被安打17。野手の失策に加えて、記録には表れない強風などによる判断ミスの連発。1916年(大5)夏に一関中(現一関一)が甲子園初出場を果たして以降、岩手県勢最多の19失点。佐々木洋監督(42)は「悔しいというより、岩手県民のみなさまや、代表として出場させていただいている東北のみなさまに申し訳ない気持ちです」。落胆の表情で頭を下げた。

 初回の明暗が、大きな差となった。「すべてが初回で決まったゲームだった」。1回表には今大会初先発の1番中森至中堅手(2年)が左前安打。2番谷直哉遊撃手(3年)も初球を左前に。だが、3番阿部剛士二塁手(3年)が、バントを空振りすると、二塁走者の中森が飛び出し、捕手からの送球でアウト。阿部も3連打で続いたが、後続は連続三振で無得点。握りかけた主導権を失った。

 1回裏には先発の田中大樹投手(3年)が四球発進。犠打と適時打で簡単に先制を許すと、二塁手の阿部がまさかの一塁悪送球。「守備が一番の売りだったのに総崩れになってしまった」。初回に4失点。2回にも再び阿部の失策や長短打で5失点。9本の長打も浴び「レベルの違いに、どうしたらいいのか…。大人と子どもの違いを感じた」。打撃陣も2回以降は、わずか3安打。計9三振で巻き返す糸口すらつかめなかった。

 「岩手から日本一」を目標に掲げ、大阪桐蔭撃破に準備を進めてきた。練習から投手にはブルペンから「今はバッター根尾。次は藤原」と想定。シート打撃で打席に立てば「ピッチャー柿木だぞ」とイメージを膨らませた。遠征などの移動のバス車内では大阪桐蔭の試合映像を流し、攻略法を探り続けた。前夜には今大会の映像も宿舎の1室を借りて、大型スクリーンで3時間かけて最終チェック。勝利する夢まで見た選手もいた。

 12年春に大谷翔平(現エンゼルス)を擁しても、2-9と大敗した厚い壁に、またもはじき返された。主将の菅原颯太三塁手(3年)は「悔しさは夏しか返せない。投手も打者も一から見直しです」と涙。大敗を乗り越えて、夏のリベンジ舞台をつかみとる。【鎌田直秀】