創成館(長崎)が、全国強豪をあと1歩まで追い詰めた。智弁和歌山を上回る16安打を放って10得点。最後は延長10回逆転サヨナラの悪夢に散ったが、昨年秋の九州王者、明治神宮大会準優勝の実力は見せた。故障者を出しながら自慢の攻撃力で甲子園のファンにその名を刻んだ創成館ナインが、夏こそリベンジする。東海大相模(神奈川)、大阪桐蔭、三重が8強へ。今日の休養日を経て準決勝は3日に行われる。

 無情にも頭上を越えていった。延長10回に1点を勝ち越して迎えた10回裏2死一、二塁。智弁和歌山・黒川の打球に創成館左翼手の野口のグラブは届かなかった。急いで返球したが、一塁走者がかえって逆転サヨナラ負け。「頭が真っ白になった。勝っていたのに、一瞬で負けてしまった」。清峰が今村(広島)を擁して優勝した09年以来の長崎県勢春4強が、あと1アウトで瞬間的に消えた。

 全国的に強打で知られる智弁和歌山を安打数で上回った。初回に3点を奪い、一時はリードを5点に広げた。猛追されても7回に突き放し、さらに土壇場の9回2点差を追いつかれても肩を落とす選手はいなかった。延長10回1死、野口が三塁内野安打で出塁した。この日5打数5安打。左足甲痛で痛み止めの薬を飲みながらでも「絶対に出塁したかった」とヘッドスライディング。その後、この日2盗塁目で捕手の失策を呼び、犠飛で一時は勝ち越しのホームを踏んだ。

 千々石(ちぢわ)中2の時、甲子園を訪れ、球場脇にある素盞嗚(すさのお)神社に「甲子園で活躍する」と絵馬を奉納していた。「自分は打てたけどチームが負けたんで悔しい」。今大会、腰痛の痛み止めの薬を飲んで1番打者を務めた峯主将も「甲子園は最後まで何があるか分からない。この悔しさを夏につなげたい」と唇をかみしめた。

 4番杉原を右手首痛でスタメン出場できないハンディもあったが、堂々の初のベスト8だった。稙田龍生監督(54)は「やはり打線が相手の方が上だった。でもこういう試合を勝てるようにならないといけない」。監督就任以来、掲げるチームスローガンは「苦戦をしても敗戦するな」。大舞台での貴重な悔しさは、最後は勝ちきる強さを身につけて夏に生きる。【浦田由紀夫】