高嶋仁監督(71)の鬼の形相で智弁和歌山ナインが奮起し、東海大相模(神奈川)との延長戦を制した。初回にいきなり4点を失いながら、4回に西川晋太郎内野手(3年)の適時二塁打で5-4と勝ち越し。智弁和歌山が流れをつかんだが、5回2死一塁で相手7番の渡辺健士郎内野手(3年)に逆転2ランを浴び、再び流れを渡してしまった。

 三塁側ベンチの高嶋監督が烈火のごとく怒ったのが、5回裏の守りを終えた直後だ。捕手の東妻純平(2年)に向かい「何をやっとるんや!? これで負けたら、帰って“シゴキ”や!!」と猛練習を予告。周囲も凍り付くド迫力だった。

 だが流れは取り戻せず、6回は3失策で4失点。5-10と大差がつき、万事休すかと思われた。ただ、今大会の智弁和歌山はあきらめない。7回2死から相手失策をきっかけに1点を返し、8回になんと4点を奪取。試合を振り出しに戻してしまった。

 こうなれば流れは智弁和歌山。延長10回、先頭の本多吏樹(りき)内野手(3年)が右前打で出塁する。1死二、三塁で冨田泰生外野手(3年)が犠飛。さらに黒川史陽(ふみや)内野手(2年)の適時打で、2点を勝ち越した。エース平田龍輝(3年)がその裏を抑え、智弁和歌山が18年ぶりの決勝進出を決めた。

 高嶋監督のお立ち台は「負け試合ですわ…」の言葉で始まった。5回裏の激怒については「1球で試合の流れは変わる。もっと1球1球を大事にしないか、ということ。詳しいこと? 聞かんで下さい。問題になる」と苦笑い。だが甲子園最多68勝監督が見せた久しぶりの超激怒で甲子園の空気は一変。がけっぷちからはい上がった智弁和歌山が24年ぶりのセンバツ制覇に王手をかけた。