決勝戦は智弁和歌山と大阪桐蔭の「名将対決」となった。18年ぶりの決勝戦で、24年ぶり2度目の優勝を狙う智弁和歌山は東海大相模(神奈川)を延長10回、12-10で下した。4点を追う8回に追い付くと延長10回に犠飛などで勝ち越し。高嶋仁監督(71)のゲキが飛ぶ中、激闘を制し勢いに乗る。紫紺の優勝旗を懸けて今日激突する。

 打ち合いになれば、主役は智弁和歌山だ。延長10回1死二、三塁。打席に向かう冨田の背中に、準々決勝・創成館(長崎)戦でサヨナラ打の黒川が「今日は決めていいですよ!」と声をかけた。

 「当たり前やろ。決めてくるわ」。中堅へ文句なしの勝ち越し犠飛。なおも2死二塁で、黒川が三遊間を破る。相手の戦意をそぐ、この回2点。エース平田は、その裏を10球で終わらせた。「僕たちの打線なら逆転できると信じていました」。初回無死二塁で救援し、180球を投げ抜いたエースも声を弾ませた。

 「何をやっとるんじゃぁ!?」

 18年ぶり決勝への流れは、この怒声から始まった。5-4の5回裏2死一塁で東海大相模・渡辺に逆転2ランを浴びた。ベンチに戻った捕手の東妻を待っていたのは、高嶋監督の鬼の形相だった。

 「1球で流れは変わるんや!」。被弾につながった配球を悔やんだ監督の不安は、6回裏に的中した。文元、西川、林が次々に失策し、一気に4点を失った。5-10と点差は開いた。

 「これで負けたら、帰って“シゴキ”や!」。雷にも似た猛練習予告は、中谷仁コーチ(38)が座る三塁側内野スタンドにも届いた。周囲の観客すら凍り付かせる迫力は、高校時代の恐怖を思い起こさせた。猛将・高嶋が復活していた。

 流れを呼び戻したのは鬼の迫力か? お家芸への選手の自信か? 8回に林、黒川の適時打で同点。延長10回で決着をつけた。「高校生の怖いところ。流れに乗ったら何をするかわからんですね」。試合後、鬼はやっと笑顔になった。

 母校・日体大の関西OB会でも、高嶋監督は打倒・大阪桐蔭を誓った。だが組み合わせ抽選会前日の親しい監督らとの恒例の食事会で、大阪桐蔭・西谷監督を目の前にしながら、高嶋監督は沈黙。居合わせたライバルは名将の優勝への決意を感じ取ったという。決戦を前に「当たって砕けろですよ」と宣戦布告。もちろん、猛将に砕ける気持ちなど、みじんもない。【堀まどか】