春季高校野球県大会が今日18日、東北各地で開幕する。宮城県大会では、東北が昨春以来の頂点に挑む。最速147キロ右腕の中山翔太(3年)は、左腕2本柱として君臨する葛岡仁(3年)、古川原将真(3年)に迫る存在に急成長。約1カ月前に投球フォームをスリークオーターに変え、球速も制球力も激変した。18日の1回戦では昨秋8強の岩ケ崎と対戦。各県の上位3校は6月7日から青森県内で行われる東北大会に出場する。

 中山は腕を下げて、評価を上げた。制球力が課題だったが、4月上旬に上手からスリークオーターに変更し安定。最速138キロだった直球も、12日の前橋商(群馬)との練習試合で147キロを計測した。入学直後の1年春から登板も、同秋から主戦を担ってきた葛岡、古川原に遅れをとってきた。敗れはしたが、仙台三との中部地区第1代表決定戦は2番手で起用され好投。「県大会でも2人が警戒されると思うので、みんながあっと驚くような良い投球をして、勝つために貢献したい」と意気込んだ。

 ベンチ外の危機から、はい上がった。制球難が続き、我妻敏監督(35)に最終テストと課された3月末の練習試合で先発。2回途中6四球で降板した。「どうしたら良いのか分からなかった。お先真っ暗という感じ」と落ち込んだ。「メンバーに残れるよう最後まで頑張りたいです」と諦めずに同監督へ懇願すると「イチかバチか腕を下げて勝負をかけてみろ」。“神のひと声”で生まれ変わった。

 我妻監督も「戦力になりつつあるが信用はまだまだ薄い。ただ技術が変わると気持ちも上がる」と期待する。中山も短期間でフォーム固めをしただけでなく、チェンジアップなど3種の新球種も習得。「覚えたカットボールやツーシームの直球系変化球でもストライクが取れるようになり楽になった」と自信も得た。

 昨春の優勝以降、昨秋は県大会1回戦で敗れてセンバツ出場を逃した。今春は地区予選すべてで公立校が第1代表を勝ち取った。中山は「宮城2強といわれる仙台育英さんがいない中で、立場は理解している。その重圧をはねのけて優勝しないといけない。目標の夏日本一に向けて、全員で勢いをつけたい」。100回大会となる夏の甲子園前に、自信を取り戻す春にする。【鎌田直秀】

 ◆中山翔太(なかやま・しょうた)2000年(平12)5月8日、仙台市生まれ。川平小4年から川平ストロングパワーズで競技を開始し、桜丘中では東北福祉仙台北シニアでプレー。東北では1年春に東北学院との中部地区予選第5代表決定戦でデビュー。184センチ、84キロ。家族は両親と弟。