札幌地区で、札幌大谷が昨夏の南北海道大会準優勝の東海大札幌を、7-0の7回コールドで下し、2年連続の南大会出場に王手をかけた。エース菊地吏玖(りく=3年)が、3回1死一塁で右越えに決勝の2ラン。投げても7回4安打無失点と投打でチームをけん引した。

 大事な試合でエースがフル回転した。0-0の3回1死一塁、札幌大谷・菊地は、内角低めの直球を迷わず振り抜いた。「打った瞬間、感触で入ったと分かった」。打球を見上げた右翼手が1歩動いた直後、すぐに追うのをやめるほど、一瞬の出来事だった。183センチ、83キロの恵まれた体から繰り出した強烈な先制弾は、昨夏準優勝の難敵を討つ、貴重な一打となった。

 投げても文句なしのパフォーマンスを披露。日本ハム、オリックス、西武などプロ5球団のスカウトが視察する中、自己最速144キロをマークした。「力で押すより制球で行こうと思っていたが、マウンドに上がったら、いい意味で脱力できて、直球が伸びた」。強力打線から7回11奪三振の内容に、日本ハムの白井康勝スカウト(49)は「真っすぐが特に良かった。春に見たときよりさらに良かった」と絶賛した。

 1年生だった16年春から背番号「1」をつけ、いきなり全道大会で初優勝した。だが直後に右肩を負傷し2年春まで登板を回避。満を持して復帰した昨夏も南大会準決勝で、優勝した北海に敗れた。悔しい思いは続く。昨秋も全道大会1回戦で、旭川実に延長10回の末、力尽きた。3-8というスコアと、被安打数18という数字を勉強机の前の壁に貼った。「毎日見える場所に置いて、悔しさを忘れないようにしたかった」。屈辱の経験を糧に、初の甲子園を狙う。

 迎えた最後の夏。初戦の24日北広島西戦翌日、控え捕手の島田康弘(3年)が五厘刈りにしたのを見て「気持ちを感じた」と、自身も青々と刈り込んだ。次第にチームに広がり、この日はベンチ入り18人全員が五厘刈り。春全道を制した2年前を思い出し「そういえば、あのとき以来の五厘刈りです」。幸運を招くつるつるヘッドで、今度は夏の頂点を引き寄せる。【永野高輔】