茨城大会の開会式では、3大会連続で女子球児が入場行進した。那珂の佐藤楓(3年)が、チームメートに混じって大きな声で堂々と行進した。「楽しかったです! 緊張したんですけど最高でした!」と笑みを浮かべた。

 大子町出身の佐藤楓は、兄2人の影響で小学2年で野球を始め、大子中軟式野球部で男子と混じって汗を流した。高校受験の際にはソフトボールへの転向も考えたが「小さいところから兄の高校野球について行っていたので、高校野球が憧れであり、目標でした」。女子でも高校野球ができる環境を探した。2学年上の大須賀美樹さんが那珂の野球部でプレーしていたことを耳にし「ここで野球をやりたい」と電車で1時間以上離れた那珂を進学先に決めた。「1番はテレビで見ていたような、かっこいい高校球児になりたい、その思いでした」と当時を振り返る。

 那珂での3年間は、男子と同じ回数のメニューをこなしてきた。ウエートトレーニングの負荷は男子部員よりは少し軽かったものの、ランニングなどの練習メニューは全く一緒。「泣きながら練習したこともありました」。1周4・5キロの外周を走っている時も「みんなと同じスタートだとやっぱり最後になった。一生懸命やっても、男女の体力差がどうしてもあって、鍛えても追いつけなくて『何でだよ』と思いながら悔しかった。どれだけ成長できても、公式試合に出られないことも、分かっていたけれど、もどかしかった」。負けず嫌いの17歳は、悔しさをバネに練習に一生懸命取り組み、誰よりも声を出して、チームを鼓舞した。須藤徹矢監督(32)も「女子扱いせずに、同じようにやってきた。取れない球は同じように怒りますし。声の元気さは男の子より上ですね」と目を細める。

 2日に行われた、玉造工との開幕前最後の練習試合が、佐藤楓が出場する最後の試合となった。第2試合のスタメンに入り、中前安打を2本放った。最終打席も思い切り振って中飛。「最後の最後に2本打てて、気持ちよかった。今までの思いを詰め込んで打ちました」。現行の規定では、試合の際に女子部員は選手としてベンチには入れないため、8日の1回戦では記録員としてベンチに入る。「声を1番に出します! チームメートとして受け入れてくれた3年生に感謝の思いで声を出します!」と元気よく宣言。佐藤楓の最後の夏が始まる。【戸田月菜】