横浜翠嵐が0-3の8回、4点を奪い逆転したが、その裏に逆転されて、敗れた。

 劇的な展開を呼んだのは主将の執念だった。先頭の2番・木村晃大外野手(3年)が一、二塁間へゴロを放つ。二塁手がわずかに弾き、無死一塁とした。スコアボードには失策を示す「E」が点灯した。

 木村の出塁から、一気に4点を挙げた。次打者は四球で無死一、二塁。得点圏に進んだものの、4番、5番と連続凡退。だが、6番・古作栄治内野手が左翼線に2点適時三塁打を放つと、7番・吉田賢一外野手も右中間を破る適時三塁打、8番・岡祐志内野手(いずれも3年)は左前適時打と、3連続タイムリーだった。

 12日の1回戦、横浜サイエンスフロンティア戦も4点差を逆転しての8回コールド勝ちだった。8回の打席に入る前、木村は思った。「サイエンスフロンティア戦も、自分が先頭打者で出塁してから猛攻で逆転した。負けてられるか。とにかく塁に出る」。思いのこもったゴロは、低く鋭く二塁手を襲った。

 ただ、逆転もつかの間、その裏に5点を失った。

 木村は横浜・中山中の軟式野球部でも主将だった。卒業時に「高校でもキャプテンをやる」と宣言して横浜翠嵐に入学した。「軟式野球部で、厳しい中学でした。うまくチームをまとめきれなくて、高校でも、もう1回、キャプテンをやって今度こそ、と思っていました」。高校の主将は、どうだったか? そう聞くと、涙を流しながら「高校は中学とまた違って、難しかったです。反省は残ります」と話した。止まらない涙を肘でぬぐいながら、続けた。「8回、みんなでつないで4点を奪えた。みんな、あきらめない、翠嵐らしい野球ができたと思う」。

 横浜翠嵐は、学力で神奈川県立の最高峰。木村は進路を問われると「北海道大で獣医師を目指したい」と迷わずに言った。