静岡県高校最速145キロ右腕の水野喬日(もとか)投手(3年)擁する湖西が、18年ぶりの夏の甲子園出場を目指す浜松商を7-3で破った。水野は硬いマウンドが合わず、終盤には暑さで両足をけいれん。最速は139キロにとどまったが、打たせて取る投球に切り替え、3失点完投で聖地への1歩を踏み出した。

 9回裏2死一塁。湖西の水野は、相手8番を三ゴロに仕留めると、右手でグラブを強くたたき、歓喜の声を上げた。「打線が点を取ってくれて、気持ちも楽になりました。途中で点数を取られてでも、気にしないように投げました」。

 相手は伝統校の浜松商。組み合わせ抽選会後も冷静を装ってきたが、重圧から解放され、ほおが緩んだ。

 実は、初回の投球練習で不安を感じていた。「緊張もありましたが、マウンドが硬くて粘れずに、球が浮いていたので、打たせて取る投球に切り替えました」。言葉通り、2回以降は技巧派へシフトチェンジ。球速は139キロ止まりだったが、縦のスライダーとカーブを効果的に投じた。結果、8被安打、5四死球、2暴投で2奪三振。苦しい内容だったが、勝つために投球をまとめた。

 暑さにも耐えた。午前9時の試合開始時点で気温30度。5回裏終了時から両足に違和感を覚え、7回の打席で一塁へダッシュした際に「両膝の裏がつりそうになりました」と話す。テーピングして臨んだ8回。今度はふくらはぎがけいれんして力が入らず、無死満塁とされたが、浜松商3番望月勇哉内野手(3年)を併殺に仕留め、1失点でピンチを乗り切った。「仲間が声を掛けてくれて冷静になれました。ゲッツーが取れたのは大きかったです」。

 1回戦屈指の好カードを制した感想を問われると、クールさを取り戻して言った。「(斎藤哲男)監督から『(浜商の)名前だけで判断するな』と言われていたので」。目標の150キロがお預けとなったことについては「マウンドがフィットする球場で出せれば」。次にスピードガン表示されるのが、準々決勝開催の草薙球場だと知ると「そこで出せればいいですが、まずは1つ1つ」と言った。

 明日16日には、2回戦(清水庵原球場)で吉原工と対する。球速は気にせず、勝ち抜くためにマウンドに立つ。【鈴木正章】