清真学園ナインは、最後まであきらめなかった。水戸商の22安打の猛攻にも、ゲームセットまで15人の登録選手全員が声を出してもり立てた。白鳥将汰主将(3年)は「点を取られても雰囲気を崩さないで、自分たちらしく思い切りやることができました。結果はついてこなかったですけど…」と涙を拭いながら言った。

 「ありがとうございます」。この言葉で始まった、清真学園ナインの夏だった。7月7日、茨城大会の開会式。白鳥が選手宣誓の大役を務めた。第100回大会という節目での選手宣誓に、「今までにないものをやりたい」。そんな思いを込めて、宣誓のなかで「ありがとうございます!」と力強く言うと、約10秒間深々と頭を下げた。前代未聞の選手宣誓に、スタンドに集まった観客からは「おおおっ」と驚いた声が上がり、やがて球場が温かい拍手に包まれた。「野球を通じて、感謝の心を学んだ。だからこそ、当たり前のように野球ができること、チームメート、家族、監督さん、コーチ、支えてくれる全ての人への思いを込めました」と白鳥は言う。

 人を助けたいとの思いが、17歳の白鳥の根底にある。昨年5月、曽祖母カツさんを亡くした。初ひ孫だったこともあり幼い頃から面倒を見てもらっていて、高校野球も応援してくれていたという。その矢先のことで、練習等で時間が合わず、カツさんの最期に立ち会うことはできなかった。「ひいおばあちゃんのかわりに、周りの人を助けたい」。高校卒業後は、福祉の道に進む。「老人ホームや特別支援学校で人の助けになることをやりたい。やりたいこと、自分に何があるかを考えたときに、小さい子どもやお年寄りを助けられる人になりたいと思いました」。

 水戸商に敗れ、清真学園の夏が終わった。互いに支え合ったチームメートに対しても、白鳥は改めて感謝を口にする。昨秋は9人しか部員がおらず、誰ひとり欠けられない状況だった。「ずっとチームをまとめられない主将だったんですけれど、最後までついてきてくれたチームメートに感謝しかないです」。辻岡敦監督(46)も目を潤ませながら「いい主将に支えられてここまで来た。ベスト32の中で最少人数で、よく頑張ったと思います。選手たちに『ありがとうございます』しかないです」と白鳥はじめナインの奮闘をたたえた。

 野球で感謝の心を培った白鳥は「ありがとう」の心を胸に、強く周りを支えてくれるだろう。【戸田月菜】