第100回の夏、秋田決勝は2年連続で明桜と金足農が火花を散らす。昨夏王者の明桜は、能代松陽相手に2本塁打を含む13安打を浴びせ、11-9で乱打戦を制した。2回に4番山口航輝外野手(3年)が2ランを、6回には5番有木裕太内野手(3年)が満塁本塁打を放ち「YAアベック弾」がさく裂した。

 「YAアベック弾」が出れば、負けるわけがない。まずは4番山口だ。2回2死二塁。5球目の真ん中低め直球をしばき上げると、打球は高々と舞い上がって左翼芝生席上段に突き刺さった。「直球に張っていた。打った瞬間、入ると思った。力を入れずに振ることができた」。今大会2本目となる高校通算25号の2ランを自画自賛した。

 5番有木も続いた。6-7と逆転された直後の6回。1死から3連続四球で満塁になると、5球目の内角直球を迷わずに振り抜いた。「ホームランは狙ってなかったけど、ここは自分が決めると思っていた。これ以上ない結果」。4回の打席で右足に死球を受けて足を引きずっていた山口を気遣う逆転グランドスラムだった。6月の磐城(福島)との東北大会初戦以来の「YAアベック弾」に、輿石重弘監督(55)は「しっかり上からたたけている。そろそろ爆発すると思っていた」とご満悦だった。

 勝負を避けられがちな4番山口に続く5番が課題だった。輿石監督は打線の改造に着手した。故障から復帰した有木を捕手から一塁手にコンバート。東北大会から5番に据えると、打線がつながり始めた。「有木は長打力があるし、勝負強い」と起用意図を説明。山口も「自分の本塁打より印象強い。あの4点がなければ負けていた。助かった」と相棒の存在を強調した。

 第100回の夏にふさわしい決勝が実現した。2年連続のライバル決戦を前に、山口は強気に宣言した。「一番の相手と最高の舞台で勝負できる。自分たちにとって夏2連覇は通過点。まずは勝って甲子園を決めたい」。長距離砲の山口擁する強力明桜打線が打ち勝つのか、それとも金足農・吉田の熟練された投球術がさえ渡るのか。意地とプライドが、ぶつかり合う。【高橋洋平】