血と涙と雄たけびの優勝だった。甲子園連覇を狙う花咲徳栄が北埼玉大会で優勝し、まずは連覇への権利を得た。最後は、投打二刀流のドラフト候補・野村佑希投手(3年)がこの日最速142キロで空振り三振を奪い、ほえた。両手を突き上げ、田谷野拳世捕手(3年)と抱き合った。

 が、様子が変だ。抱き合う直前、感極まった一塁手の新井英一(3年)が、泣いて猛然と駆けてきた。すると田谷野が持つキャッチャーマスクが、新井の鼻横を直撃。鼻血が飛び、野村の太もも、杉本直希主将(3年)の背中など、ナインのユニホームに点々と赤いしみを作った。

 鼻血に気付かないナインに新井はもみくちゃにされ、背番号もいつの間にかはがれた。「新井、泣きながら鼻血出してました」と野村は思い出し、ちょっとだけ笑う。「ガツーンときました。でも自分たちの代で甲子園、最高にうれしいです」と笑う新井は、校歌斉唱時も鼻血がタラリ。今大会、2本塁打。最後まで当たっていた。

 日本一チームの後輩たち。重圧はすごく、野村も「本当に苦しかった」と吐露する。岩井隆監督(48)も「プレッシャーで厳しい夏になる」と予想した。脳科学の専門家に学び、ナインの「究極の集中力」を引き出そうと努めた。「考えてもダメだって!」「楽しめ!」「自分たちで変えるんだ!」。何度となく言葉で導いてきた。

 舞い戻る甲子園でも、連覇の2文字はついて回る。「高校生の計り知れない力を、何とか出し切りたい」と岩井監督は言う。普段はクールな選手たちが、大願成就で感情を出し切った。花咲徳栄がまた1つ、ステージを上がった。【金子真仁】

 ◆花咲徳栄(はなさきとくはる)1982年(昭57)創立の私立校。生徒数1881人(女子874人)。野球部も82年に創部された。部員は145人。甲子園出場は春4度、夏は4年連続6度目。主なOBは広島高橋昂也、中日清水達也、ボクシング元世界王者の内山高志ら。埼玉県加須市花崎519。田中一夫校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦10-1桶川西

3回戦12-0八潮南

4回戦9-2春日部東

準々決勝4-1正智深谷

準決勝11-0滑川総合

決勝4-1上尾