佐賀大会は準決勝が行われ、「炎の中継ぎ」と称された元ダイエーの故藤井将雄氏(享年31)の母校、唐津商が10-0の6回コールドで龍谷を下し、決勝に進んだ。大会前、佐賀・唐津市にある故人の墓に参り、魂を継承する最速140キロ右腕のエース伊藤諒成(3年)が6回3安打無失点と好投。佐賀商は6-3で有田工を撃破し、08年以来16度目の夏の甲子園出場へ王手をかけた。

 今は亡き藤井氏も、天国でほほえんでいるに違いない-。唐津商の「藤井2世」こと、炎のエース伊藤が2年ぶり6度目の夏の甲子園を目指し、6回3安打無失点の快投を演じた。

 最後の打者を捕邪飛に打ち取ると、雄たけびをあげ、気迫のガッツポーズが飛び出した。大会前、自宅から自転車で5分の同氏の墓に墓参り。中・高野球部で藤井氏のチームメートだった父大一郎さん(50)と墓前に手を合わせ「甲子園を目指しています。力を貸してください」と祈った。伊藤自身、藤井氏と同じ湊中を経て唐津商へ。マウンドにかける魂を継承する。

 夏4試合目の先発も、初回からエンジン全開だ。最速140キロの直球を主体に、夏に解禁したチェンジアップのほかツーシーム、縦横のスライダーで相手打線に的を絞らせない。プロ注目で主将の土井克也捕手(3年)も「強気の投球で、ピンチでも動じない」という伊藤を好リードで無失点に導いた。

 伊藤は01年2月生まれで、00年10月に肺ガンで亡くなった藤井氏との面識はない。ただ中学で3年間バッテリーを組んだ父大一郎さんからは「練習にまじめに取り組んでいたよ」など、人柄やダイエー時代の活躍について聞かされ、成長した。自宅の壁には、同氏のプロ野球カードや写真が今でも飾られている。生前の藤井氏は、元気の源だった。

 吉冨俊一監督(35)は、今日25日佐賀商との決勝に向け「投手はすぐ帰し、ケアさせます。言葉は悪いが伊藤と心中する覚悟。(決勝は)伊藤で行きます」と早くも先発を予告。相手はエース木村の連投が濃厚だ。“炎のエース”は負けるつもりはない。【菊川光一】

 ◆伊藤諒成(いとう・りょうせい)2001年(平13)2月15日、佐賀県唐津市生まれ。野球は小1から湊マリーンズで始める。湊中軟式野球部から唐津商へ。捕手だったが肩の強さもあり、1年秋に投手転向。昨年の新チームから背番号1。一時背番号10も、今夏はエースで復活。あこがれはソフトバンク千賀。遠投100メートル。174センチ、70キロ。右投げ左打ち。家族は両親と兄、姉。血液型O。