あと1死が遠かった。北大阪準決勝。履正社が9回2死からの逆転負けで、大阪桐蔭に屈した。

 「奇襲」で攻めた。先発は外野手の浜内太陽主将(3年)。「中学生以来だった」という公式戦初登板だ。中学時代までは投手だったが、高校では肩を痛め、野手に転向。しかし、投手陣の台所事情から6月に投球練習を再開していた。「元々チームのためにと思って準備はしていた。やってやるという気持ちでした」。気概はピッチングにも表れた。キレのある変化球で6回まで被安打3と好投。7回に失点し、1度はそのイニング途中で右翼に回ったが、8回から再びマウンドへ。だが、最後に待っていたのは悪夢だった。

 1点リードで2死まで追い詰めたが、ストライクが入らなかった。「緊張はなかった。平常心と言い聞かせたけど簡単にはいかなかった」。4者連続四球などで暗転し、勝利目前で力尽きた。4番藤原への初球を投じる際には膝から崩れ落ちるシーンもあった。計149球。力の限り戦った。岡田龍生監督(57)は「こんなに球数投げるなんて思っていなかった。子どもらは120%の力を出してくれました」とねぎらった。

 「圧倒的日本一」。年明け、チームで決めたスローガンだ。浜内は「打倒大阪桐蔭でやってきて本当にあと少しのところで負けてしまった」と目を赤くした。「後輩にはなんとしても甲子園にいってほしい」。夢を託した。【望月千草】