全国高校野球選手権の新潟県代表・中越(2年ぶり11度目の出場)が29日、甲子園出発前の最後の全体練習を行った。シートノックでは背番号14の川島悠弥内野手(3年)が締めのノックを受けた。甲子園では三塁コーチとしてチームを支える。中越ナインは今日30日、長岡駅から新幹線で甲子園入りする。

 中越の全部員が注目し、激励の声が注がれる。その中で、ただ1人守りについた川島が、二塁の守備位置で本田仁哉監督(41)のノックを受けた。

 鋭い打球が左右に散る。飛びついてもグラブが届かず、届いてもはじかれる繰り返し。顔面も土で覆われ始めたころ、一塁側の打球に横っ跳び。しっかり捕球すると正確なバックホーム。ナインの「OK!」の声に続き、ネット裏の練習見学者からも拍手が起きた。

 「こんなにユニホームを汚したのは初めて」と笑う川島は、「入学から2年4カ月やって、最後に残ってノックを受けられた。ありがたいです」と穏やかに話した。「順番に打っていったら、彼になった。ムードを盛り上げてくれる大切な存在」と本田監督は言う。

 昨秋からベンチ入り。「もともと打力はある」(本田監督)が、主な仕事場は三塁コーチスボックス。昨秋、今春と試合中の判断が甘く、初戦はコーチに立てなかった。夏に向け、三塁コーチを務めたOBに自らアドバイスを受けにいった。普段の練習は、守備も打撃も試合に生かす判断材料を探すつもりで臨んだ。その結果、夏は全6試合で三塁コーチを務めた。

 「試合に出ない司令塔。状況判断をしっかりしてくれる」と本田監督は信頼を寄せる。母校グラウンドでの練習を終えた川島は「節目になった」と言い、「甲子園でも正確な仕事をしたい」と集大成の場に視線を向けた。【斎藤慎一郎】