聖地で自分たちの野球をやりきった。28年ぶり出場の藤蔭(大分)ナインが、優勝候補に意地を見せた。石川大会無失点の星稜に対して4得点。最速150キロをマークした星稜・奥川に8安打を浴びせ快音を響かせた。

 3安打を放った4番奥園は「手元で伸びるすごい球だったけど、自分たちはしっかり振る練習をしてきた。自分の力は出せた」。8回2死二塁から、速球をジャストミートして中前への適時打をマークした。「持ち味である積極的な打撃はできました」。100回の記念大会の開幕戦。独特なムードの中でも、打席で高校生活のすべてを出し切った。

 星稜打線に9点を奪われたが本来の力を封じた。石川大会決勝で合わせて7発をマークした4番南保と5番竹谷には、1安打しか許さなかった。南保に対しては4打数無安打。リードした堀田捕手は「外角だけでなく内角も攻める作戦通りだった」と満足げだった。

 校長でもある石井潔部長(66)は「満足です」と振り返った。福岡市内での軟式野球クラブの指導者経験を生かして、このチームを作り上げた。4番奥園に加え、この日リレーした吉村、市川も直接誘った選手だった。「甲子園のベンチに入りたいという夢もかないました」と涙はない。

 自ら主将として出場して以来の甲子園でもあった原秀登監督(45)は「(主将だった)28年前はあっという間に終わったが(監督の)今回は短かったけど長かった」と感慨深げ。残念ながら最初に敗れたチームになったが、最高の夏の思い出を手に入れた。【浦田由紀夫】