<全国高校野球選手権:横浜7-0愛知産大三河>◇9日◇1回戦

 打球は右翼フェンスを直撃して弾むと、内野に戻るように転がった。横浜(南神奈川)の内海貴斗一塁手(2年)が5回に放った一打だ。「入ると思ったんです」。右手を突き出すガッツポーズ。それが一塁を蹴るや、慌ててスピードを上げた。柵越えのつもりが一転、ランニングホームランになった。

 フェンス直撃でも、選手の方がぶつかってホームランになったことがある。80回大会(1998年)のこと。宇部商・清水夏希が左翼フェンスを襲う打球を放つと、追った日大東北の左翼渡辺功之が滑り込むように激突した。ピクリともしない。右手がラバー下にある鉄板と地面の間に挟まれた。「解放」されたのは、生還から10分後だった。

 内海は南神奈川大会の準決勝で右足に肉離れを起こし、今もベストではない。「二塁で止まろうと思ったら、三塁コーチがグルグル手を回すんで」。生還したものの、柵越えできなかったことには悔いが残る。「右足の踏み込みが弱かったのか、甲子園は簡単には入りません」。照れくさそうに言った。【米谷輝昭】