金足農(秋田)打川和輝内野手(3年)が、甲子園初マウンドに立った。1-12の6回裏、限界のエース吉田を引き継ぎ登板。3回を3安打1失点に抑え「悔しいマウンドでしたけれど、気持ちをぶつけて投げられました。三振をとれたのも幸せでした。悔いはありません」と胸を張った。

 秋田大会初戦から1度も守備変更すらなく、決勝まで勝ち上がった。投げたくてうずうずしていた。ブルペンなどで感覚を忘れないため投球練習は繰り返してきた。吉田から「後は任せた」と託され、投→右→左→三→投の“打川シフト”に変更。今春の秋田大会決勝以来約3カ月ぶりの公式戦登板でも、チェンジアップやスライダーで大阪桐蔭打線に歯止めをかけた。

 吉田降板でもナインが集中力を持続できたのは、本気で言い合える関係だから。練習から、気の緩みを見せる選手がいれば、お互いが罵声を浴びせた。時にはケンカに発展。秋本コーチは「本当はいけないのですが、グラウンドでは容認していた。ただ練習後はダメだときつく伝えました」。

 諦めない心の構築。終盤7回表の好機には、そんな姿が約4万5000人の観衆を引きつけた。バックネット裏、内野、外野席すべてが、金足農の応援曲に合わせて手拍子する異様な雰囲気も作りあげた。打川は4番としての打撃でも2安打を放った。「銀メダルと甲子園の土は家の玄関に飾ります」。「カナノウナイン」の主砲として堂々と秋田に帰る。【鎌田直秀】