秋季高校野球の東北6県各県大会が、今日14日の福島を皮切りに開幕する。明日15日開幕の秋田県大会では、「輝星から本塁打を打った男」田口駿介主将(2年)がチームを引っ張る能代に注目だ。今夏の県大会3回戦で、甲子園準Vに輝いた金足農エース吉田輝星(3年)から先頭打者弾を放った自信を胸に、各県上位3校に与えられる東北大会(10月12日開幕、秋田)出場権獲得に挑む。青森、岩手、宮城も15日、山形は21日に開幕する。

新主将の田口は、バットを右肩にかついで胸を張った。「吉田さんは甲子園準優勝した投手。あのボールに対応して、しっかりとしたスイングができた。テングになってはいけないが、自信にはなっている。あの1発のイメージを忘れないで、チームを打撃で引っ張りたい」。記念のホームランボールは、透明なケースに入れて自宅の玄関に飾っている。朝には、ボールにも「行ってきます」のあいさつを日課に、気持ちを高める。

「実は、最初からホームランを狙っていたんです」。最速150キロの金足農・吉田を分析する中で、ギアを上げない130キロ後半の直球1本に絞っていた。左翼ポール際に会心の一撃。一時逆転されたが、9回表には3-3に追いつく同点内野安打も放った。その裏にサヨナラ負けを喫したが、「カナノウを、もっとも追い詰めたチーム」の手応えもある。菊地陽介捕手、工藤琉希也外野手(ともに2年)、小林日出内野手(1年)ら今夏メンバーには大きな経験値となった。

悔しさの一方、金足農が甲子園で活躍する試合映像に、かじりつきとなった。応援の気持ちすら湧き上がってきた。田口は「同じ公立校ですし、自信を持って楽しくプレーすること。その姿勢で流れを引き寄せることは見習わないといけない」。今秋は1番から3番に変わった。「重圧も責任もある」と力を込めた。

県北地区予選決勝では大館鳳鳴に11-12と敗れたが、全3戦で31得点と自慢の打力は結果が出た。練習試合で青森山田に打ち勝ったことも自信の1つ。県大会では17日の初戦(2回戦)で今夏準優勝の明桜と対戦する。「まだまだ打撃でも課題はあるが、少しずつ改善していく。技術うんぬんじゃなく気持ちが大事なことも、カナノウさんにも教わった」と強豪に挑む。

同校の軟式野球部は今夏の全国大会に出場。過去には2度の全国優勝も成し遂げている。「自分たちも負けていられない。春の甲子園を目指してやっている。東北大会の決勝に行って、初めて満足できる」。92年夏を最後に、甲子園出場からは遠ざかっている。初のセンバツ出場に向け、どんな強豪相手にも競り勝ってみせる。【鎌田直秀】

◆田口駿介(たぐち・しゅんすけ)2001年(平13)10月25日、秋田・能代市生まれ。能代五小4年から五小フェニックスで競技を始め、能代東中では能代リトルシニア所属。高校入学後は1年春からベンチ入り。今夏は「1番遊撃」。173センチ、73キロ。右投げ右打ち。家族は両親と姉。

◆今夏の能代対金足農VTR 能代が1回表、田口がカウント1-1からの3球目を先頭打者弾。金足農は3回裏に菊地亮太捕手(3年)のスクイズや菅原天空内野手(3年)の右前適時打などで3得点。能代も8回表に石井海斗捕手(3年)の左前適時打で1点差に迫ると、9回表に田口の内野安打で同点。だが、金足農は9回裏1死満塁から、高橋佑輔内野手(3年)が右前適時打を放ちサヨナラ勝ちした。