酒田南(山形1位)の191センチエース右腕・渡辺拓海(2年)が延長12回を5安打完投し、4-1で日大東北(福島2位)に辛勝した。体重113キロで「ジャンボ」の愛称通りの豪快な投球を披露。5回まで無安打に封じるなど、最速144キロの直球を主体に踏ん張った。

酒田南の「ジャンボ渡辺」が、最後の打者を外角直球の空振り三振でねじ伏せた。気迫あふれる表情で勝利の雄たけび。仲間に祝福されると、一気に目尻を下げ、ハイタッチで勝利を分かち合った。「最後は思い切り腕を振って『誰も打てないぞ』っていう思いで投げました。気持ち良かったです」。野球人生初の12回完投に「スタミナの面でも余裕があった」と胸を張った。

元気の源は大好物の母清美さん(48)が作る特製のカツカレーだ。試合の勝利後が定番。「おなかをすかせて家に帰った時のにおいがたまらない。母は『お疲れ~』って言って出してくれるんです」。減量も課題の1つだが、直径約30センチの皿にカレーとご飯が半々。1回だけ、おかわりする。ひき肉、鶏肉、豚カツ…。「肉だらけカレーです」。勝利の余韻以上に食欲には勝てず? 宿舎へ急いだ。

下半身の強化が最大の礎だ。小1から相撲も本格的に取り組んだが、今でも四股などを練習に取り入れる。今夏以降は鈴木剛監督(37)との“猛稽古”。チーム恒例の6キロ走後、休憩なくブルペン投球を約1時間。さらに左翼と右翼のポール間を20本ダッシュを加えることもあった。「今日の後半も『抑えられる』という謎の自信がありました。勝ちきるのがエースです」と手応えの1勝をつかんだ。

先発全員18安打でも決定打を欠き続けた打線には課題が残った。12回に吉嶋楽人内野手(2年)の勝ち越し打も、エースの踏ん張りがあってこそ。次は16年の同大会準決勝で4-5と敗れた因縁の盛岡大付戦。166球を投じた渡辺は「次もいきます。優勝します」。02年以来となるセンバツ切符の期待もジャンボになってきた。【鎌田直秀】