作新学院(栃木)の小針崇宏監督(35)が「先生」として帰ってきた。

日本高野連が若手指導者育成のため主催する「甲子園塾」が2日、大阪・太成学院グラウンドで最終日を迎えた。11年目を迎えた同塾。「塾長」を務める元星稜監督で元日本高野連技術・振興委員会副委員長の山下智茂氏(73)、元報徳学園監督の永田裕治氏(55)らとともに小針氏は35歳の若さながら初めて講師として指導にあたった。全国から集まった講習者の27人は23~41歳。同世代がほとんどだった。

小針氏は9年前の第2回の受講者だ。塾参加者が講師を務めるのは初めて。16年夏に甲子園制覇するなど実績も指導手腕も十分と評価され、山下氏らの推薦を受けた。

00年3月、作新学院の選手として選抜大会の前に太成学院のグラウンドで練習試合を行った。「18年ぶりで縁を感じました」。この日は二塁や三塁からのスタート練習を同校の生徒に指導。小針監督は自ら体を動かして「バックが上手ならもう1歩出られる」「動から動の意識を」「走塁は1人、2人がうまくてもダメ。チームでうまくならないと」と口調を強めた。その言葉を若手指導者が熱心にメモをとり、積極的に会話も交わした。

小針監督は「講師で呼んでいただいたが、恐れ多い。2度目の講習を受けるという思いが大半。27人と一緒に学ぶ気持ちでした。もっとこうしたい、こうしてみようという思いが湧いた。少しでも山下さん、尾藤さんの気持ちをくんで恩返ししたい気持ちでした」と振り返った。最後に太成学院の選手に「夏に甲子園で会おう」と誓い合って、指導を終えた。

かつて講師を務めていた箕島元監督の故・尾藤公氏や山下氏の教えが今も支えだ。「尾藤さんは体調が悪い中でもグラウンドに来ていた。『これからの高校野球を頼むぞ』と言われていた。選手に愛情を注げ、自分の魅力を作れ、と言っていただいた。これからも見守っていただけたら。身が引き締まります」

他校の選手でも名前を呼びながらコミュニケーションを取り、丁寧かつ具体的で笑顔あふれる指導が印象的だった。塾長の山下氏は「今の高校野球を引っ張ってくれている。若手も目標が定まったと思う。一番喜んでくれているのは尾藤監督だね」と頼もしそうだった。