“農業系エース”に会いに行った。注目のドラフト候補に迫る「ドラフト候補生全員!? 会いに行きます」は、21世紀枠で春夏通じ甲子園初出場の石岡一(茨城)の岩本大地投手(2年)。プロも注目する147キロ右腕は県内唯一の造園科で学んでおり、造園技能検定3級の持ち主だ。2月中旬、実習授業で竹垣作りに励む岩本を訪れた。

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農園に造園科の2年生36人が集まった。週2回の実習日だ。野球部は岩本ら5人。昼下がりのじんわり汗が出る陽気だったが長袖、長ズボンの作業服にヘルメットをかぶり、竹垣作りに臨む準備完了。前回の実習では2本の親柱(両端の木のくい)を打ち込んだ。この日の課題は2つ。(1)150センチの胴縁(どうぶち=両親柱を水平にわたす材)を3本、100センチ以上の立子(たてこ=両親柱の間に均等に打ち込む材)を9本、青竹から切り出す。(2)胴縁を3本、親柱にくぎで水平に据える。これらの作業を1時間あまりで行う。

「胴縁、何センチ?」「短すぎた」「くぎ、どこ?」。生徒の声が飛ぶ。4人の先生が回りながら、和やかに進む。勝手が違うのは、テレビや新聞のカメラ計4台が岩本を追ったこと。同級生にはやし立てられ「野球では慣れてますけど」と照れた。地味な作業に見えるが、時間内に胴縁を3本とも据えられたのは8人だけ。岩本は2本で終了。「ちょっと曲がっちゃいました」。胴縁の高さが左右で1センチほどずれ、悔しがった。

造園科の斉藤教諭は「求められるものを正確にやれるか。感覚や癖で作ってはいけない。素直な気持ちが大事」と強調した。その点、野球部員は「素直な子が多い」と評価する。竹垣の後は、石工事、築山、植栽を学び、8月に造園技能検定2級に挑む。合格率10%ほどの難関だ。造園関係に就職する生徒は毎年4、5人だが、即戦力として造園界の期待は大きいという。

岩本は実習後、練習に向かった。夏の甲子園出場なら検定試験はお預け。その前に、まずはセンバツだ。目標は同じ農業系出身の日本ハム吉田輝星。「吉田投手のように、低め真っすぐの伸びが欲しい」と下半身を鍛えてきた。実習も、野球も、素直にコツコツ取り組んでいる。【古川真弥】

▽石岡一には女子選手もいる。浜田芽里(めりい)内野手(1年)で、岩本と同じ八郷中出身。50メートル6秒9で中学では正二塁手。県選抜にも入った。県外の女子野球部と悩んだが、2人の兄も通った地元校を選んだ。規則で公式戦は出られないが「お手本がたくさん。ためになります」と男子との練習を前向きに捉える。ひつじ年生まれが名の由来。長兄の虎太郎さんはとら年、次兄の龍寿さんはたつ年だ。そんな浜田にサプライズ。川井監督に、甲子園開会式でプラカードの持ち手に指名された。「甲子園に行けなかった兄2人とベンチに入れない選手の思いを理解して、踏みしめたいです」と意気込んだ。