明豊(大分)が龍谷大平安(京都)に延長11回サヨナラ勝ちで春夏を通じ初の4強進出を果たした。

息詰まる投手戦に終止符を打ったのは“寮長”だった。0-0の延長11回裏2死満塁。打席に11回表から一塁守備についた背番号15の後藤杏太(3年)が入る。追い込まれ、川崎絢平監督(37)の指示でバットを短く握り直す。カウント2-2からの6球目。内寄りの真っすぐを右中間へ。すぐに右手を突き上げ、一塁ベースを回るとうれしい涙があふれてきた。

「自分が決めようという気持ちでした。サヨナラ打は人生初。打った瞬間に涙が出てきて…」

川崎監督も「寮長としてコツコツやってくれている彼が打ってうれしい。感動です」とたたえた。野球部の「創心寮」。新チームの寮長に後藤は指名された。「自分はまじめな方なんで」と自ら認める。寮長の仕事は多い。朝はだれよりも早く起きて、起床の号令と点呼。夜は選手の携帯電話を集める。そんな仕事をいとわず、指導者の右腕となって働き、野球の練習にも打ち込んできた。赤峰淳・野球部長は「野球の神様が見ていてくれました」と目を潤ませた。

過去に夏3度のベスト8があった。現ソフトバンクの今宮健太内野手を擁しても破れなかった壁をついに突き破った。「8強を超えたいと思っていた目標がかなった」と言う川崎監督は選手時代、智弁和歌山で97年夏に全国制覇を経験している。同じ感激を今度は監督として選手に味わせたい。殊勲の後藤は「いつも手助けしてくれるベンチ外のみんなに恩返しできた」と笑顔を見せた。