エース兼主砲・石川昂弥主将(3年)の暴れっぷりに、チームメートもあきれたように笑った。

3番石川の後ろを打つ4番熊田任洋遊撃手(3年)は「石川はすごかったですね」とうなった。中堅右、右中間に放り込んだ特大弾2発に「自分も(あんな打球を)打ってみたいですよ。でも、打つ方は無理です」と脱帽した。それでも、守備では内野の要として3併殺中2つに絡み、3つのゴロ、1つの飛球を無難に処理。「石川が良かったし、大胆に守れました」と鉄壁の守りに貢献した。

石川の女房役、成沢巧馬捕手(3年)は石川の調子を「今日が(5試合中)一番悪かった」と意外な事実を告白した。ただ「真っすぐの質、回転が良くなくて『体に力が入らない』と言うんで、じゃあ腕を少し下げようと試したら、調子が戻ったんです」。昨秋段階でサイドスローだった石川が一番力の入りやすい投げ方として、スリークオーターを選び、試合中に修正したという。「石川は本当に器用。試合中の修正も、本来は野手だからこだわりがないんでしょう」。

ただ、石川の快投も、扇の要・成沢への信頼があればこそだ。センバツ5試合で本塁を守った男は、優勝について「夢の舞台で優勝できたことは素直にうれしいんですが、実感が本当にわかなくて…」。決勝戦の試合時間は、わずか1時間30分だったが、感覚的にはそれ以上のスピードだったようで「3イニングぐらいしかやってない感じ。5試合で1試合分ぐらいですかね」。舞台が甲子園ならでは感覚のようで、笑いながら首をかしげていた。