享栄(愛知)の大藤敏行監督(57)が名門再建へ自信を示した。

09年に中京大中京で堂林翔太(現広島)らを擁して全国制覇。昨秋から、同じ愛知4強のライバル享栄の監督になる「禁断の移籍」が話題になった。センバツで優勝した東邦や古巣を敵に回して、00年春以来の甲子園を目指す。

瀬戸市にある練習場。県大会初戦を20日(大同大大同戦)に控え、日が暮れるまでノックを打った大藤監督の声は枯れていた。

「楽しいですよ。いいチームになってきた。何とかこいつらを(甲子園に)と思っています。イメージが、中京にいた頃に近づいている感じがある。自信が出てきたところです」。プロ注目の主将、河田翔太内野手(3年)を擁し、新1年生にも有望株が多数。手応えは高まっている。

約35年間も「中京」に染まっていた。10年に監督を退いたが、ライバル校から要請を受けて「もう1度、子どもたちと夢を追いたい」と決意。母校関係者からは拒否反応もあったが「僕の人生」と割り切った。昨年8月の初の公式戦ではユニホームに袖を通すまで30分ほどかかった。「今は違和感は全然ありません。100年くらいやっている顔してます」と笑った。

ブランクの間は、甲子園のテレビ解説やU18日本代表コーチなどで勉強を積んだ。外から野球を見たり、他の指導者と接するうち、大阪桐蔭・西谷監督の、勝敗の責任を負う姿勢に感銘を受けた。「年下だけどスゴい男だな、と。ああいう監督を目指さないと」。

東邦がセンバツで躍進している頃、名古屋地区2次予選で中京大中京や至学館を倒して「優勝」した。練習試合も含め母校に3戦3勝。ただ実力差はまだあると感じる。「このままでは東邦、中京とは戦えない。プラスアルファが必要」。1年生も全員が練習に入り、野球部一丸を愛知制覇のカギとする。名将の異例の挑戦に注目だ。【柏原誠】

◆大藤敏行(おおふじ・としゆき)1962年(昭37)4月13日、愛知・常滑市生まれ。中京(現中京大中京)では79年夏の甲子園に三塁手で出場。中京大卒。90年から母校の監督に。97年春に準優勝、09年夏に43年ぶり優勝。10年夏限りで退任。17年のU18W杯(カナダ)で日本代表ヘッドコーチ。18年4月から享栄の教員になり、同年8月から監督を務める。