大船渡(岩手)の最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(3年)が3日、今季初の公式戦に登板した。春季県大会沿岸南地区予選・住田戦に先発し、3回1安打無失点で4奪三振。最速は140キロだった。チームも17-2で勝利し、春季県大会(17日開幕)出場が決定。山あいの釜石市・平田運動公園野球場に集まった2800人が、新時代の球界を背負うであろう逸材の「令和初陣」を見届けた。

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釜石大観音が遠くから、大観衆が360度から見守る中、佐々木の令和が幕を開けた。「緊張していた」という初球は、135キロ直球でボール。だが焦らず、その球速帯の直球と変化球で3者凡退に。「1回が終わり安心しました」と気持ちを込めて話した。

観客の一番乗りは早朝3時半。160キロへの期待が渦巻く山あいの球場でも、芯を貫いた。この日の最速はメジャー球団のスピードガンでの87マイル(約140キロ)。直球平均球速は135・1キロで、高校生史上最速163キロを出した4月6日の平均156・4キロを21キロも下回った。「(球速は)4~5割程度。配球とか緩急とか、いろいろな引き出しを作れたと思います」。

思い描いた通りの投球に、攻撃面もさえた。2回無死、トレードマークの黄金バットを振り抜いて二塁打に。5番木下大洋外野手(3年)が犠打をすると「(本塁)ベースが空いていたので狙いました」と相手守備のすきをつき、二塁から走りを緩めず一挙ホームイン。昨夏甲子園での金足農の2ランスクイズを想起させる、迷いのない走塁で球場全体をどよめかせた。

ぶれなさと輝きが両立し、スターの要素が日に日に高まる。「いろいろな方が見に来てくださっている。その中でも自分たちのプレーができれば」と佐々木。観客席からは「いつになったらまた160キロ投げるんだろうな」との声もあった。答えを知るのは、佐々木のみ。次戦は6日、岩手・住田町で行われる高田との沿岸南地区第1代表決定戦。歴史的1球を求めてファンはどこへでも足を運ぶ、そんな展開になり始めた。【金子真仁】