今春センバツ優勝の東邦(愛知)が星城との2回戦で敗れる波乱があった。

甲子園優勝投手で、今大会初登板の石川昂弥投手(3年)が3被弾を含む7回13安打9失点の大乱調。まさかの8回コールド負けで、平成と令和をまたぐ春夏甲子園連覇の道を絶たれた。

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幕切れは、番狂わせを象徴するシーンだった。3-9の8回裏。三塁に回ったばかりの石川の失策から招いた1死満塁。1点失えばコールド負け。内野陣は浅めに守り、本塁送球に備えた。が、石川はゴロをさばくと二塁を向いた。ベースカバーは誰もいない。慌てて本塁を向いたが、もう間に合わない。なすすべなく一塁に投げた瞬間、王者の夏は終わった。

「練習では三遊間の方だったら(二塁経由で)ゲッツーとなっていた」とがっくり。連係ミスで終わったが、実質はそれまでに勝負は決まっていた。「悔しい。打てなかったこともだが、3本塁打も打たれてしまった。もっと丁寧に投げていればこんな試合になっていなかった」。

3-0と先制した直後の3回に2ラン、4回先頭に同点ソロ。4回は6安打に失策もあり、4失点で逆転された。7回にはダメ押しの3ランを浴びた。今夏は背番号5で野手に軸足を置く方針だったが、最初のヤマ場の試合で先発を託された。だがセンバツで5勝、決勝では完封した頼みのエースは再び輝けなかった。

打撃では初回に会心の中前打を放ったが以降は左飛、中飛、三ゴロ。反撃の糸口を作れなかった。

進路は「プロです」と明言。野手一本と決めており、スカウト4人で視察した中日など複数球団が上位指名を検討する。8月下旬のU18W杯の日本代表の有力候補でもあり、個人の挑戦はまだ続く。「甲子園にも2回出場して優勝もできた。本当にいい3年間でした」。時代またぎの甲子園春夏連覇の夢は消えたが、石川に涙はなかった。【柏原誠】