海洋科学の鈴木将也主将(3年)は、完敗にも終始、笑顔だった。

「1番中堅」で先発。1回、先頭打者でいきなり左中間を破る二塁打を放った。場内をどよめかせる大きな一打に、塁上で大きくガッツポーズ。「当たった瞬間、これはいったと。よく覚えてないです」と笑顔で振り返った。

県内唯一の水産・海洋系の専門学科を持つ同校。毎年のように部員不足に苦しみ、昨秋、今春は公式戦出場なし。さらに鈴木は、4月20日から6月18日までの2カ月、大型実習船「湘南丸」に乗り込み、ハワイ沖でのマグロはえ縄漁の遠洋航海実習を受けていた。部員は鈴木を含めて9人ギリギリの状態。それでも「副将の大兼(渚颯外野手=3年)が引っ張ってくれるので」と、不在中のチームに不安はなかった。

実習船の1日は多忙を極める。午前3時から同8時近くまで朝の漁。食事や休憩などを挟んで、午後1時半から同10時近くまでを再び実習に費やす。野球から離れたが「筋トレやイメージトレーニングはしていました」とイメージを高めることは忘れなかった。

迎えた最後の夏。チーム安打は、鈴木の最初の1本のみ。コールドで大敗したが、悔いはなかった。「ずっと人数が足らない中で、最後に出られて、強い星槎に0-16。頑張ったと思います」。試合終了時の整列時、星槎国際湘南の一柳大地主将(3年)と笑顔で握手。「甲子園に行ってくれ」と伝えた。野球を続ける予定はないという鈴木。「最後かもしれないけど戦えてうれしかった。後輩たちは来年もある。エラーをなくせば勝てるようになるかもしれない」。後輩にも思いを託し、笑顔で球場を後にした。【鈴木正章】