最後の夏は安定感たっぷりに始まった。横浜(神奈川)は初戦となった2回戦の横浜旭陵・相模向陽館に5回コールド勝ちした。エース及川雅貴投手(3年)は3番手で登板。5回の1イニングをほぼ直球だけで押し通し、3者三振で締めた。今春センバツは初戦の明豊(大分)戦で3回もたずKO。今春県大会は背番号1を外れ、登板機会がない試合もあった。夏初戦で、本来の姿を感じさせた。

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バットに触れさせもしなかった。17-1の大量リードで迎えた5回、及川はマウンドへ向かった。「先発でもリリーフでも、任されたところを抑えられたらいい」と点差も番手も関係なかった。初球、ワインドアップから投じた直球は外に外れたが、2球目は空振り。直球4球で追い込み、高めのつり球で空振り三振を奪う。次打者は外の直球で見逃し。圧巻は3人目だ。直球を3つ続けて振らせた。横須賀の空に、堂々たる復活を印象づけた。

意図を持って臨んだ。全12球のうち、実に11球が直球だった。見逃しストライク2球、空振り7球、ボール2球で、ファウルは0。変化球はセンバツ後に投げ始めたカーブを1球、見逃されただけ。バットに当てさせなかった。「初戦は直球中心と決めてました。どの投手でもそうですが、直球がいかないと変化球は使えない。直球が軸になる」と説明した。ネット裏には5球団のスカウトが集結。スピードガンでは、ラスト12球目で最速145キロを記録した。あるスカウトは「バランスがいい。良い投手だと思った」と率直に言った。力んで引っかける直球は皆無だった。

明豊戦は先発で3回もたず降板。四球から崩れた。春季県大会では背番号10となり「試合に出られない悔しさもありました。また1番をもらえた。3年生が活躍しないといけない。最後の大会。日程はハードだけど、自分の投球を目指していかないと」と使命感に燃える。センバツの屈辱から115日。雪辱は、もちろん同じ甲子園で。その第1歩を進めた。【古川真弥】

▽横浜・平田徹監督(及川について)「投げる予定でした。良かったと思います」