全国屈指の遊撃手は、最後の夏を不完全燃焼で終えた。

桐蔭学園の森敬斗主将(3年)が2安打を放つも、7回2死満塁の好機で1本が出ずに打点0。悔しさをかみしめながら、相手校の校歌を聞いた。

「状態がよくなくて、自分の中で焦りがあった。この壁を乗り越えられなかったのは、自分の弱さです」。今春痛めた左足首の影響もあり、走攻守で本来の力を出し切れなかったが、主将として大きな成長を遂げた高校野球生活だった。

昨秋県大会までは、自らの好不調が態度に出たり、ふてくされる場面も見られたという。片桐健一監督(45)から「心を入れ替えれば飛躍するチャンス」と指摘され目が覚めた。「我を出し過ぎず、チームにいい影響を与えようと。技術だけでなく姿勢の部分でも」と森。今春行われたU18日本代表候補の合宿でも、一番早くグラウンドに出て準備をし、最後までトンボをかけて帰る姿が、仲間や関係者の目に留まった。

今後の進路については「プロでも大学でも、少し考えてから悔いのない道を選びたい。もう1度、ゼロからのスタートです」。心技体で一回り成長した18歳が、最高のリスタートを決める決意だ。【鈴木正章】