福岡大会は、県内有数の進学校東筑が「スクランブル投手リレー」で接戦を制し、2年ぶりの4強にコマを進めた。西日本短大付も投手戦を制して4強入り。筑陽学園、九州国際大付と合わせベスト4が出そろった。大分では準決勝が行われ、今センバツ4強の明豊が敗退。28日の決勝は大分商と藤蔭が甲子園をかけて戦う。

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スタンドがベンチが、そして本人がドキドキしていた。東筑の絶体絶命のピンチでマウンドに上がったのは、新チームになって練習試合でも投手として登板のない和久田秀馬外野手(3年)だった。5点リードで迎えた9回に2点を失い、なおも1死満塁。青野浩彦監督(59)が、センターから和久田をマウンドに上るよう指示した。「あんなに観客がいる中で投げられて、うれしかった」。周囲の心配をよそにピンチを楽しんだ“急造投手”が、その後のピンチを切り抜けると大きな雄たけび。まるで守護神のように振る舞った背番号8が、チームを2年ぶりの4強へと導いた。

和久田 昨日(25日)、監督さんから投手として投げるかもと言われてちょっと準備しただけでした。昨年5月以来、練習試合では投げたことがなかった。

投手の経験はあるが右肘を痛めていたこともあり、昨年5月から投手を控えていた和久田に、青野監督も驚いていた。「あんな投手らしい投球ができるなんて。ビックリしました」。一昨年夏、昨年春と大黒柱、石田旭昇投手(現法大1年)を擁して甲子園を経験したが、今年は任せられる投手不在だった。「ベンチに経験者が7人くらいいて、もうやりくりしかありません」。そんな中、青野監督が24日にひらめいた。

「一昨日、和久田がマウンドで投げる夢を見た。頭の中で何かが言ったんです。だから昨日(25日)和久田に行けるかと聞いたら、大丈夫だというから。シート打撃で少し投げさせた。打たれても同点だから、いいかと思って使いました」。“神のお告げ”といわんばかりのスクランブル起用がズバリ当たった。

「4強まできたのも考えられない。優勝なんて、とてもです」。無欲の和久田に導かれ、県内有数の進学校があと2勝となった頂点まで快進撃を続ける。【浦田由紀夫】