21度目出場の熊本工が伝統の粘りの野球で、延長12回劇的なサヨナラアーチで、夏甲子園通算30勝目を挙げた。2-2で迎えた12回1死走者なし。打席に入った山口環生(たまき)内野手(3年)が、初球の直球をたたいて、バックスクリーンへたたき込んだ。
サヨナラ試合は令和の甲子園初めて。サヨナラ本塁打は大会21度目。
両者1歩も譲らない息をのむ延長戦の戦いは、割れんばかりの歓声の中、フィナーレを迎えた。山口の公式戦2本目アーチが、チームのメモリアルアーチ。
山口 打った感触がなかったくらいに真芯(ましん)でした。全力で走っていたので打球は見てなかった。審判の方が手を回していたのでホームランだと思った。奇跡です。
山口はお立ち台で終始、白い歯を見せた。それまで4打席無安打。それでも予感はあった。「真っすぐなら打てる。打ち損じていただけだ」。自分にそう言い聞かせ、真っすぐだけを頭に置いて入った5打席目。初球の低めの直球。無意識に振り抜いて劇的弾にしてみせた。
夏の大会前は調子を落とし熊本大会は背番号13の屈辱を味わった。大会期間中、平日は電車などで通勤1時間はかかる宇土市の自宅に午後9時くらいに帰宅すると、空腹にもかかわらず、1時間ほどバットを振り続けた。
「ガムシャラに何も考えずに野球に集中しました」。甲子園は最高のプレゼントを用意してくれた。
7番打者だが、長打力はチームメートも認めている。4番の内田雄大外野手(3年)は「あいつは遠くに飛ばす技術がある。2人でフォロースルーとか飛距離を伸ばす話をよくしている」と話せば、背番号17の梶原凌介主将(3年)は「甲子園練習でも左翼ポール直撃弾を打っていた。普段の学校のグラウンド練習でも、ビル3、4階の建物の高さはある左翼のネットを越えることもある。打球が飛び込む近所の人から『打たせないでくれ』という苦情もありました」という、飛ばし屋でもあった。
母校を率いる田島圭介監督(38)も声が弾んだ。「代打も考えたが山口を信じた。ホームランの瞬間、歓声に包まれ、頭が真っ白になった。選手に感謝です」。自身、甲子園初采配での初勝利は、最高の思い出になった。手渡されたウイニングボールは、ヒーローのホームランボールでもある。田島監督は惜しみなく山口にプレゼントした。【浦田由紀夫】

