天理(近畿・奈良)がメガネの1年生スラッガー、瀬千皓(せ・ちひろ)外野手の1発を含む3安打5打点の活躍などで仙台育英(東北・宮城)を破り、準優勝した08年以来11年ぶりの白星を挙げた。白樺学園(北海道)は国士舘(東京)に競り勝ち、天理とともにベスト4進出を決めた。

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1年生のスラッガーは、メガネの奥の鋭い眼光で失投を逃さなかった。0-0の4回。天理の5番・瀬が、相手左腕のスプリットをとらえ、豪快な先制2ランを左翼席へたたき込んだ。「打った感じではフェンスを越えると思わなかった。うれしかったので、(ダイヤモンド)一周をまわるのが速かった」。高校通算6本目、公式戦3発目を会心の笑顔で振り返った。

仙台育英に2度も追いつかれたが、決めたのも瀬だった。7回2死満塁。2番手右腕のスライダーを狙い打ちして勝ち越しの3点三塁打。「狙っていたけど、思ったより曲がったので、少し泳いだ」。崩されながらも右翼手の頭を越えた。

「自分の親族しか周囲ではいない」という珍しい名字の強打者。トレードマークのメガネは小学4、5年からかけている。「視力は0・1もない。コンタクトも少し考えていますけどメガネに怖さはないです」。オークリー社のスポーツ用を愛用。サングラスレンズを上から装着もできる。試合用と練習用で2本、授業など普段用と3本を使い分けている。

チームは奈良3位から近畿大会に出場し、報徳学園、奈良大付、履正社、大阪桐蔭の強豪を連覇して、神宮出場を決めた。原動力の1人が決勝の大阪桐蔭戦でも本塁打をかっ飛ばした背番号20の瀬だった。ベンチ入りが2人減った神宮では「17」をつけて躍動した。

前回出場した14年の初戦で敗れた仙台育英に雪辱。OBで元近鉄、阪神の中村良二監督(51)は「近畿大会で魔法は解けたと思ったけど、まだ解けていなかった」とナインをたたえた。近畿大会決勝で公式戦初先発し、強打の大阪桐蔭を8回途中4失点に抑えた1年生の192センチ右腕・達(たつ)孝太投手も背番号18でベンチ入りしている。瀬&達。センバツ出場を確実にしている天理の1年生コンビに注目だ。【石橋隆雄】

◆瀬千皓(せ・ちひろ)2003年(平15)6月11日、奈良県生まれ。あすか野小2年の時、あすか野ファイターズ(軟式)で始める。上(かみ)中では生駒ボーイズに所属。投手や捕手もやっていたが天理では外野に専念し1年秋からベンチ入り。好きな選手はソフトバンク柳田悠岐。「左打者ですが、あのフルスイングが好き」。178センチ、76キロ。右投げ右打ち。

◆「瀬」という名字 インターネットサイト「名字由来net」によると、全国に約340人がいるとされる。由来として「伊勢の豪族。近年、兵庫県に多い。『瀬』は流水が浅く流れているところを現す」と書かれている。