倉敷商(岡山)の8年ぶり4回目のセンバツ出場が決まった。OB星野仙一さんが18年1月4日に70歳で他界後、初の甲子園切符。新チーム結成時に就任した梶山和洋監督(32)の下、昨秋は岡山県大会こそ準優勝だったが、中国大会は準々決勝、準決勝でいずれも延長11回の激闘を制し、決勝は鳥取城北を9-7で破って優勝、中国王者となった。甲子園は夏に8強が2度あるが、未勝利の春でまずは初戦突破を目指す。

「星野仙一」は偉大なOBだとチーム全員がわかっているが、1965年(昭40)卒の先輩に正直リアリティーはない。

伊丹健部長(40)は「あいさつしたことがある程度で…」。イメージはテレビの“珍プレー好プレー集”で、中日の現役時代に宇野勝遊撃手の“おでこ捕球”に怒って、グラブを投げつける人だ。

梶山監督も「倉敷商の名を広めてくれた大先輩」と言いつつ、印象は「世代が全然違いますから…」。高2の時、学校で講演に来た星野さんを見て「すごく黒く日焼けした人」と感じた程度しかない。

主将の原田将多遊撃手(2年)は「戦いに命をかける。死ぬか生きるか、という感じです」。星野さんの映像は見る。もっぱらYouTubeで。ベンチのイスを蹴ったり、壁を殴ったり、怒った姿ばかりが頭に浮かぶ。

しかし、やはり「倉敷商=星野仙一」なのだ。昨秋の明治神宮大会後、監督、部長、スタッフが発案したのが「仙一メニュー」だ。「1日1000スイングをさせたい。そこで星野さんにちなんで1001本、振ろうと」(伊丹部長)。ボールを遠くに飛ばすロング・ティー打撃、通常のティー打撃、トレーニングをミックスし、1001本目は「甲子園で1-2で負けている、9回裏2死満塁」を想定して、こん身の一振りで締めくくる。

倉敷商がセンバツで掲げる目標は「ベスト4」。梶山監督は「本当のチャンピオンは夏の優勝校と思う。そのための春です」と意図を説明する。原田主将は「仙一メニュー」効果もあり「粘り強さが倉商野球ですが、今年は強攻策も取れると思う。バットをしっかり振ってきた自信があります」と言う。燃える男の、闘将のDNAを受け継ぐ名門が、天国の先輩に熱い戦いを見せる。